コンドームの所持イコール売春ではない 米で可決された法案がセックスワーカーを救う

ほとんどの州で、コンドームを所持していることが売春の意思の証拠とみなされる中、新たな法律が流れを変える。(Photo by BSIP/UIG/Getty Images)

クリステン・ディアンジェロ氏がかつて売春をしていた頃、セックスワーカーがたむろする場所を警察が定期的に一斉捜査したという。「警察官がいきなり現れて、バックを取り上げて中身を全部ぶちまけるんです。それから腕に注射針の跡がないかをチェックする。ポケットの中まで調べるんですよ」

現在はSWOP(Sex Workers Outreach Project=セックスワーカー救済プロジェクト)のエグゼクティヴ・ディレクターを務めるディアンジェロ氏はローリングストーン誌にこう語った。「いきなりなんです。一切質問はしてきません」。時折こうした所持品検査でコンドームが見つかることがある。米カリフォルニア州の法律では、売春目的で徘徊していたとして逮捕および起訴の対象となる。

彼女が街に立っていた頃は、こんなことは日常茶飯事だった。ディアンジェロ氏いわく、結果的に大勢の商売仲間がコンドームを一切携帯しなくなったため、性病にかかる危険がますます高くなった。SWOPで働き始めると、彼女は他のメンバーらと一緒に名刺を配って歩き、自分の権利について知るべきだとセックスワーカーに言った。コンドームを根拠とする所持品検査は違法であり、同意しなくても構わないのだと教えて回った。「みんな目を大きく見開いてこう言うんです。『口で言うのは簡単よ。私は(警察の)言う通りにするわ、だってあいつらは神なのよ』」とディアンジェロ氏。

だが、カリフォルニア州で誕生した画期的な法律のおかげで事情は変わるだろう。7月30日、ギャヴィン・ニューサム州知事は法案SB233号に署名した。スコット・ウィーナー州上院議員が提案し、SWOPをはじめとするセックスワーカーの権利擁護団体が強く後押ししたこの州上院法案は、2つの重要事項が盛り込まれている点で大きな意味を持つ。ひとつは、性的暴行や家庭内暴力の被害者として警察に届け出ているセックスワーカーに免責を認める条項が加えられていること。もうひとつは、コンドームを売春目的の根拠として認めていないことだ。

この手の法案は今回が初めてではない。2014年にはニューヨーク警察が、今後コンドームを売春目的の根拠とみなさないと公表した。その2年前には、サンフランシスコでも同様の方針が導入された。だが、構想に5年かけたカリフォルニア州の法案が可決された勢いは――ウィーナー上院議員のような政治家の支持を得た事実も含め――セックスワーカーの権利を求める戦いの流れを大きく変えることになるだろう、とディアンジェロ氏は言う。ニューヨーク州やワシントン州の活動家から聞いた話をふまえ、ほどなく他の州もこれに続くだろうというのが彼女の予想だ。

Translated by Akiko Kato

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