『アビイ・ロード』と『レット・イット・ビー』、ビートルズのラストアルバムはどちら?

ビートルズの公式アルバムとするか、単なるバンドのプロジェクトのひとつとみなすかは、グレーゾーンだ。1970年代のファンは、『ヘイ・ジュード』と『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』がビートルズの公式アルバムかどうかを巡って議論を戦わせたが、今では誰も話題にしない。キャピトル・レコードとしてはもちろん、各プロジェクトをアルバムとみなした方が好ましいと考えるだろう。ただ、その判断基準については明確でない。例えば『マジカル・ミステリー・ツアー』は公式アルバムとしているが、『リール・ミュージック』は公式としない方がよいとキャピトルは考えている。

『レット・イット・ビー』が公式アルバムかどうかのグレーゾーンにあると言う人もいるだろうが、ファン目線で言うと、同アルバムは『イエロー・サブマリン』や『ヘイ・ジュード』と同じ路線にあるといえる。公式スタジオアルバムは11枚だという意見は納得できるし、『レット・イット・ビー』と『イエロー・サブマリン』も含めた13枚という見方にも賛同できる。また、1970年代初頭にキャピトルが寄せ集めで編集した『ヘイ・ジュード』まで加えて14枚としてもよいとさえ思う。

『マジカル・ミステリー・ツアー』はグレーゾーンにある。英国で6曲入り2枚組EPとしてリリースされた同作品も、米国では1967年に1枚のアルバムとしてリリースされた。従って、同アルバムは『ヘイ・ジュード』と同等の扱いを受けてもよいといえる。しかし、『マジカル・ミステリー・ツアー』が公式アルバムの基準から外れている、と主張する声を今では聞かなくなった。クオリティだけが基準となるひとつの例だ。厳密な解釈を求める人ですら、『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』を含まないという理由でEPバージョンの方がよいなどとは言わないだろう。『マジカル・ミステリー・ツアー』、『イエロー・サブマリン』、『レット・イット・ビー』はただの補足的作品だとして、ビートルズの公式アルバムを10枚とするのは、確固たる根拠があろうがなかろうが、馬鹿げた意見だと思う。全ての馬鹿げた意見にはそれなりの根拠がある。根拠もなく主張する者を『ロック評論家』と言うのだ。

結論として、『アビイ・ロード』でなく『レット・イット・ビー』がビートルズのラストアルバムである。ただし、『レット・イット・ビー』をビートルズの公式アルバムと認定する場合に限る。同作品をビートルズの公式アルバムとしながら、バンドのファイナルアルバムではないという主張は当たらない。同アルバムには、少ないながらもメンバーが1970年に仕上げた作品も含まれるからだ。個人的には『アビイ・ロード』の方がお気に入りで、こちらをラストアルバムだと言いたいが、実際は『レット・イット・ビー』がビートルズのラストアルバムだ。それでも作品に対する私の思いが変わることはないだろう。

Translated by Smokva Tokyo

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