失敗を繰り返す人たちの物語、映画『さよならくちびる』ハルレオ誕生秘話

© 2019「さよならくちびる」製作委員会

小松菜奈、門脇麦がダブル主演を務めた映画『さよならくちびる』。同名主題歌を秦基博、挿入歌2曲をあいみょんが制作したという豪華なコラボレーションも話題の本作だが、映画を基にしたノベライズ本も発売されている。ローリングストーン誌では、監督・脚本を務めた塩田明彦と、ノベライズを担当した相田冬二の対談を敢行。

映画『さよならくちびる』は、『害虫』や『抱きしめたい -真実の物語-』でメガフォンを取った映画監督、塩田明彦によるオリジナル脚本。ハル(門脇)とレオ(小松)によるフォークデュオ、ハルレオがローディー兼、付き人のシマ(成田凌)と共に「解散ツアー」を行う2週間を描いたロードムービーである。「解散の日」が近づくにつれて、3人の人間関係が微妙に変化していく様子を丁寧に描いており、同名主題歌を手がけた秦基博と、挿入歌2曲を手がけたあいみょんによる素晴らしい音楽が、「本格的な音楽映画」を目指したという本作を骨太のものにしている。

一方ノベライズは、映画の中で描かれなかったエピソードや、特にハルの細かい心理描写などが加わっており、映画を観終わってから読めば作品世界により深く入り込むことができるだろう。

今回RSJでは、監督・脚本を務めた塩田明彦と、ノベライズを担当した相田冬二の対談を敢行。本作を「失敗を繰り返す人たちの話」だという塩田と、「ハッピーエンドかアンハッピーエンドかといえば、アンハッピーエンド」だという相田と共に、『さよならくちびる』の真髄に迫った。

──映画『さよならくちびる』は、どのような経緯で製作がスタートしたのでしょうか。

塩田:まず企画として、小松菜奈さんと門脇麦さんを共演させ、そこにもう一人、主役級の男性俳優をぶつけて何かストーリーが作れないかというオファーから全てが始まりました。その設定を基に色々考えていたら、解散ツアーを行う女性アーティスト2人と、その付き人の男という関係性がふと頭に浮かんだんです。

後から思い返してみると、自分がそんなことを思いついたのは、映画『害虫』(2002年)の音楽に起用したナンバーガールの解散が、大きなキッカケだったことに気付きました。最初からそれがモチーフとしてあったわけではなかったのですが、今年に入ってナンバーガールが再結成するなど、妙にリンクしてしまったのは不思議な気分でしたね(笑)。


© 2019「さよならくちびる」製作委員会

──「本格的な音楽映画」を目指したそうですが、そこで気をつけたこと、こだわったことは?


塩田:やはり「楽曲勝負」というところはありますよね。もちろん、音楽なので好みもありますし、世の中の全ての人が「素晴らしい」と思う楽曲なんて、なかなかないと思いますが。僕が考えたのは「必ずしも時代の最先端をいっている必要はない」ということ。むしろ時代からは少し外れている音楽……そんなこと言うと、実際に作曲してくださった秦基博さんとあいみょんさんに対して失礼かもしれないですが、これぞ今の音楽、みたいな気負いとは別の魅力を持った音楽。

──わかります。物語の設定として、ちょっと時代からは遅れている音楽ということですよね。

塩田:そうです。今どきフォークデュオという編成に、新しさはないですからね。そういう音楽をやっている女の子たちの「ドサ回り」を描きたかったんです。その時代から外れた感じが一周回って新鮮だったり、面白く感じたりしたらいいなと。実際、そんな音楽を作ってくれる人はいるのかな、と思っていたところ、音楽プロデューサーの北原京子さんからの助言で、秦さんとあいみょんさんを紹介していただいたんです。

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