フジロック現地レポ ヴィンス・ステイプルズが示した、日本でのヒップホップをめぐる環境の変化

ヴィンス・ステイプルズは28日(日)、フジロック3日目のWHITE STAGEに出演。(Photo by Masanori Naruse)

昨日とは打って変わって天候に恵まれたフジロック最終日。ホワイトステージには、各国/各ジャンルの第一線を走るバンドとアーティストが並んだ。韓国のヒョゴ、日本のKOHHに続いて登場するのは、カリフォルニア州ロングビーチからやってきたUSヒップホップ界きっての異端児ラッパー、ヴィンス・ステイプルズだ。

始まる前には、すでに日本でのプロップスが確立されているヒョゴやKOHH、この後に登場するジェイムス・ブレイクと比べると、初めて日本でまともにライブを行うヴィンス・ステイプルズは少々苦戦するのではないかと予想していた。しかし、蓋を開けてみれば、それも杞憂に過ぎなかった。会場には後方までたくさんの人が集結。数年前までは、ヒップホップ系アクトは苦戦を強いられるのが当然のようだったフジロックだが、改めて日本でのヒップホップをめぐる環境の変化を実感する。

内臓にまで響くような低音が鳴る中、アメリカのアニメ、ドラマ、バラエティ、ニュースなど様々なTV番組のシーンをカットアップした映像が流れ、「Applause(拍手)」のメッセージに合わせてヴィンス・ステイプルズが登場。1曲目は最新アルバム『FM!』から「FUN!」だ。〈俺たちは楽しみたいだけ〉と連呼されるこの曲は、ライブの幕開けにはぴったりだが、彼自身はいたって平常で飄々とラップしているように見える。



DJ卓は客席からは見えにくい舞台袖に設置されているため、ステージ上でパフォーマンスするのは終始ヴィンス・ステイプルズ本人のみ。後方スクリーンにはずっと8つのブラウン管テレビが映り、それぞれにヴィンス自身が出演するフェイク番組が流れるのだが、“垂れ流し”のような状態で目を引く出来事が起こるわけではない。エモーショナル過ぎる演出や脚色の一切ないステージングも、USヒップホップ界きっての異端児であるヴィンス・ステイプルズらしさの表れだろう。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE