フジロック現地レポ ハイエイタス・カイヨーテが織りなす圧巻のプレイに歓喜

ハイエイタス・カイヨーテは28日(日)、フジロック3日目のGREEN STAGEに出演した。(Photo by Kazushi Toyota)

昨日の悪天候から一転。時おり雨がぱらつくも、力強い日差しに汗ばむほどの陽気に恵まれた3日目。昼下がりのGREEN STAGEに登場したのは、オーストラリアはメルボルン出身のフューチャー・ソウル・バンド、ハイエイタス・カイヨーテだ。

2015年にバンドとして初来日を果たし、翌年には「GREENROOM FESTIVAL’16」に参加した後、東名ツアーを敢行しサマーソニックにも出演するなど、ここ日本でも精力的にライブを行い、着実にファンベースを広げてきた彼ら。紅一点のヴォーカリスト、ナオミ・ネイパーム・ザールフェルトは2017年、「ネイ・パーム」名義でのソロ・アルバム『Needle Paw』をリリース。アコースティック楽器を主体としたロウな手触りのサウンド・プロダクションと、トライバルな要素をちりばめたソウルフルなメロディが各方面で話題を呼んだのも記憶に新しい。

ネイ以外のメンバーも、スウーピング・ダック名義のプロジェクトで2018年に日本デビューを飾るなど、サイド・プロジェクトの活動も順調な彼ら。メンバー4人揃ってのライブも同年6月にTAICOCLUBにて行われてはいるが、フジロックへの参加は今回が初。そのため場内は、開演前から大きな期待に包まれていた。

後方に、日の丸をモチーフにバンドのロゴとコヨーテをあしらった巨大なバックドロップが張られている他は、メンバーそれぞれの機材が最小限配置されただけのシンプルなステージ。そこに、まずはペリン・モス(Dr、Pe)、サイモン・モノシリ(Key)、ポール・ベンダー(Ba)が姿を現し、軽くジャムセッションを開始。サイモンが奏でるスペイシーなシンセフレーズと、ペリンの繰り出すトリッキーなリズム、そして、トレードマークの青いボンゴ6弦ベースを背負ったポールが放つシンセのノイズ音が有機的に交わっていく。もう、その段階で苗場の湿度が20パーセントくらい下がった気がしていると、満を持してネイが登場した。


Photo by Kazushi Toyota

「こんにちはー! みんなとっても美しいわ!」

キューピーの人形を数個ぶら下げたピンクのミッキー(ミニー?)帽子を被り、バーガンディーのブラウスとピンクの網タイツというド派手な衣装。何より目を引くのが、ポケモンの「プリン」をモチーフにしたピンクの編み上げロングブーツだ。昨年、ソロ作を携え初の単独来日公演を敢行するも、その後Instagramで乳がんを患っていることを報告、先日は手術も行っていたことが明らかになっていた彼女。それだけに、こうして元気な姿を見せてくれたというその事実だけで胸がいっぱいになる。


Photo by Kazushi Toyota

「この曲は、宮崎駿からインスパイアされた曲です」と紹介された、その名も「Laputa」(2015年『Choose Your Weapon』収録)からライブはスタート。日本のアニメや音楽に深い関心を持っていることでも知られている彼らだが、この曲はネイが宮崎の「引退宣言」を聞き、映画『天空の城ラピュタ』のシーンにインスパイアされて完成させた曲だという。宮崎へのリスペクトと『ラピュタ』への思いが歌詞にも込められた、この曲のシンプルかつスピリチュアルなメロディを、ハスキーかつソウルフルな歌声で歌い上げるネイ。まるで重力を解き放たれたかのように、ふわふわと舞うシンセのコードバッキングがたまらなく心地よい。続いて演奏された新曲は、切なくも夢見心地なエレピに乗せた、ジャジーなメロディにうっとりしていると一転、複雑なシンコペーションを繰り返すドラムとメロディックなベースが、強靭なグルーヴを生み出していく。

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