フジロック現地取材 クルアンビンを育んだ「異文化」と「ミニマリズム」の源流

─ところで、マークが使っているギターは1本だけなんですって?

マーク:そう。2001年に作られた、メキシコ製のストラトキャスター。フレットを打ち替えたり、ピックアップを改造したりしているけど、もうずっとこれ1本を使い続けている。俺はコレクターじゃないからね(笑)。もう自分の手足というか、どう弾いたらどういう音が出るのか、体で覚えているんだ。

─あと、以前のインタビューを読んで面白いと思ったのが、音数の少ないシンプルなアンサンブルになったのは、田舎で暮らすようになったからだというものだったんです。

マーク:そうそう(笑)。今、俺たちは納屋でレコーディングしているんだけど、そうするとドアが軋む音や風で木の葉が揺れる音、鳥や虫の鳴き声、そういうものが自然とマイクに入ってくる。商業用のスタジオじゃ絶対そんなことないだろ。防音遮音がしっかりとしているから、シーンとした空間の中で演奏することになるので、なんか「音を埋めなきゃ」と思ってしまいがちなんだ。納屋だとそんな必要がないというか、むしろミックスダウンの段階で「ちょっと虫の鳴き声を上げておくか」みたいな話になることもあるんだよね(笑)。それでどんどんアンサンブルがシンプルになっていったんだ。

─今後、例えばヴォーカリストをフィーチャーした曲を作る予定などありますか?

マーク:実を言うと、最初はボーカリストを入れることも考えてたんだ。ただ、「入れるんだったら英語以外の言語で歌う人」と決めてた。しかも80カ国語くらい操れる人がいいなって(笑)。それに見合う人がいなかったんだよね。

─でしょうね(笑)。

マーク:ギターでも充分メロディを弾くことができるし、スリーピースの方がアレンジも楽だなと思って。その考え方は、任天堂のゲームをやって育ったことがかなり大きく影響している。当時のゲーム音楽って、出せる音が限られていたから、必要最小限の中で様々なアレンジを生み出す工夫がされていたんだ。リズムとベースとメロディを軸に、どれだけバラエティ豊かな音を出すかっていう。ミニマリズムならではの音楽作りだよね。そこに惹かれたんだ。

─めちゃくちゃ興味深いです。「制限がある方がクリエイティブな発想が生まれる」ってよくいいますもんね。

マーク:ただ、レーベルからは「ボーカルを入れなきゃダメだ」と言われたので、じゃあメンバー全員で一緒に歌おうってことになった。サンタナとかもそうだけど、ユニゾンで歌うことで、オーディエンスもシンガロングしたくなるっていう効果も得られたんだ。

─今日このあと、ライブでシンガロングするの楽しみです。

マーク:(日本語で)ありがとうございます。

─(笑)。日本語はどのくらい知ってるの?

マーク:2つ覚えたよ。「どうもありがとうございます」と「生2つください」!(笑)


Photo by Kazushi Toyota



<リリース情報>

KHRUANGBIN 『Hasta El Cielo (Con Todo El Mundo in Dub)』

KHRUANGBIN
『Hasta El Cielo (Con Todo El Mundo in Dub)』
発売日:2019年7月12日(金)
レーベル:Night Time Stories / Beat Records
品番:BRALN50DUB
価格:¥1,857+税
ボーナストラック2曲収録

KHRUANGBIN 『全てが君に微笑む』

KHRUANGBIN
『全てが君に微笑む』
発売日:2019年7月12日(金)
レーベル:Night Time Stories / Beat Records
品番:BRC-605
価格:¥2,200+税
ボーナストラック追加収録/解説書封入
全曲初CD化!

Translated by Yuriko Banno

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