シーアの知られざる波乱万丈人生、どん底から這い上がったポップスターの歩み

Illustration by Nigel Buchanan for Rolling Stone

唯一無二のポップスター、シーアが歩んできた波乱万丈な道のり。その第一歩は、この世界で生きていく術を見出すことだったーー。先日、フジロックフェスティバル19’ で圧巻のステージを披露したシーアの知られざる人生とは? 来日を記念し、彼女と古い友人であるローリングストーン誌ライターが綴った2018年の翻訳記事を掲載する。

本記事は、2018年8月に掲載された記事の翻訳です。

シーア・ファーラーは恋人募集中だ。2018年の現在、恋人を探している誰もがそうであるように、彼女もまたTinderやBumble等のアプリを使っている。偽名こそ使っているものの、彼女はアプリ上で自分の写真を公開している。しかし、誰もが彼女だと気づくわけではない。「シャンデリア」(現時点でYoutubeの視聴回数は19億回に達している)「チープ・スリルズ」(この曲によって、彼女は40代にしてナンバーワンヒットを放った数少ない女性シンガーのひとりとなった)等を大ヒットさせながらも、彼女はステージでは何年にも渡って巨大なブロンドのウィッグで顔を隠してきた。アプリ上で興味を示した男性から職業を尋ねられると、彼女は作家だと答えることにしている。しかし会話の成り行き次第では、こう明かすこともあるという。「あと実は私はポップスターで、シーアっていうの」

「何人かとデートしたんだけど、みんないい人だったわ」シーアはそう話す。彼女はオーストラリア生まれだが、過去7年間はロサンゼルスに住んでいる。「楽しかったし、勉強にもなった。ああいうのって私にとっては新鮮なの。オーストラリアじゃお試しデートってものがなくて、みんないきなり付き合い始めるから」

彼女は盲目的に恋に落ち、失敗した過去がある。2014年、彼女は映画監督のエリック・ラングとの最初のデートからわずか2週間後に婚約したが、結婚生活は2年で破綻した。現在の彼女は、仕事に臨む時と同じくらい慎重にデートの相手を見極めているという。「だいたい2~3回デートすると、『うーん、この人じゃないかも』ってなっちゃうのよね」彼女はそう話す。「42歳での恋人探し、何かと面白いわ」

彼女は大抵夜8時にはベッドに入り、3匹の飼い犬(リック・リック、パンテラ、シリアル)と一緒にテレビを見て過ごすという。日中は12ステップ・ミーティング(アルコールやドラッグを断とうとする人々の集まり)に参加したり、親しい友人と出かけたりしているが、その大半は彼女が有名になる前から付き合いのある人々だという(筆者はその一人だと自負している)。彼女は何人かのポップスターたちとも親しくしており、その1人であるケイティ・ペリーは彼女にとっての「ポップスター講師」だという。「家に来てくれてる栄養士さんも彼女の紹介なの」シーアはそう話す。「ポップスターのいろはってものを、私は全部彼女から学んだの」

スターとしての資質は天性のものではなかったが、この世界でシーアが歩んできた道のりは極めてユニークだ。作曲家であり歌手でもある一方で、彼女は他のアーティストへの楽曲提供という役割が最も自分に適していると感じている。彼女はまるで理性という名の崖を切り崩そうとするかのような、ビッグでエッジの効いた歌声の持ち主でありながら、ビヨンセやブリトニー・スピアーズ、ケイティ・ペリー等のポップスターたちに提供した曲数は100を超えており、ナンバーワンヒットとなったリアーナの「ダイアモンズ」はそのひとつだ。その一方で彼女は、これまでにアルコール中毒や双極性障害、自己免疫疾患、自殺未遂など、様々な問題を(時には同時に)経験している。

現在の彼女の生活は充実し、そして安定している。過去の経験から、彼女は自分なりのバランスの取り方を身につけていた。しかし何年にも及んだセラピーや薬物治療、そして12ステップ・ミーティングも、アルコールとドラッグを求める彼女の内なる声を完全に消し去ることはできない。その内なる声について、彼女はこう説明する。「クソクソクソ。くそったれくそったれクソッタレ。この負け犬、バカバカ、クソクソくそったれ」

「過去10年間、私は常軌を逸したダイエットを続けてた」彼女はそう話す。「『ホットなポップスター』ってやつを目指してたから。でもある人にこう言われたの。『そんなステレオタイプにこだわる必要なんかない。君はアーティストなんだから、見た目なんてどうだっていいんだよ』ってね」

Translated by Masaaki Yoshida

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