フジロック現地レポ シーアが挑んだパフォーマンス・アートと音楽ライブの融合

虚構と現実が入り交じったライブ空間

『This Is Acting』の楽曲を中心に構成されたセットは、シーアがブレイクするきっかけを作ったデヴィッド・ゲッタの「Titanium」から「Chandelier」、アンコールに「The Greatest」と代表曲を立て続けに披露して終演へ。その後ダンサー役のマディー・ジーグラーが舞台を降りると、スクリーンには舞台裏でスタッフ達と労いの言葉をかけ合いながら歩くマディーの姿が映し出される。もちろん、この映像も虚構であり、最後にはシーア自身と言葉をかけ合い、映像もライブも本当の幕引きとなった。

音楽ライブでありながら演奏は舞台装置の一部に過ぎず、パフォーマーの身体的な躍動や映像を介した仕掛けなど、細やかな演出を総合することで成り立つ新感覚のアート表現を届けてくれたシーア。このライブのベースとなった2016年発表の7thアルバムは、もともと彼女が他アーティストに提供する予定だった楽曲を収録した作品で、その制作が“演じているようだった”ことから『This Is Acting』と名付けられていた。自身の感情ではなく他者の感情を“演じた”ことを端緒にして、彼女は音楽表現の在り方を根本から見直し、パフォーミング・アーツと音楽ライブを組み合わせた先にある新境地を切り拓いてみせたのだ。





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