ザ・キュアー代表曲「フライデー・アイム・イン・ラヴ」知られざる7つの真実

2. ロバート・スミスは自分が誰からコード進行を盗作しているのではないかという妄想に取り憑かれていた

スミスは、ポール・マッカートニーが「イエスタデイ」を苦労せずに作ったような、自分がどこからともなく「フライデー・アイム・イン・ラヴ」の曲をぱっと生み出したことが信じられなかった。「何が言いたいかっていうと、『フライデー・アイム・イン・ラヴ』は天才が作った作品ではなくて、ほぼ計算して作った曲なんだ。本当にいいコード進行だから、このコード進行が他の誰にも使われていなかったというのが信じられなくて当時、本当にいろんな人に聞いて回ったよ。俺はドラッグでの妄想もあったから、『どこかからこれを盗んできたに違いない。俺がこんなのを思いつくはずはない』と思っていたんだ」と彼はNME誌に2008年に語った。

マッカートニーと同じように、彼はメロディをつける手助けをしてくれる音楽好きな友達を探した。「知っている人全員に聞いたよ。本当に“全員に”だ。みんなに電話して曲を歌って、『この曲を聞いたことあるかい?なんてタイトル?』って聞くと、『いや、聞いたことないよ』ってみんな答えた。同じアルバムに苦労して作った曲も数曲あって当時はそっちの方が間違いなくいいと思っていたけど、『フライデー』こそ『ウィッシュ』を代表する曲なんだと思うよ」

3. スミスにとっては感情的な歌詞より“ばかばかしい”歌詞を書くほうが難しい

ロバート・スミスは特にポジティブな態度のアーティストとして知られているわけではないため、「フライデー・アイム・イン・ラヴ」のような臆面もない楽天的な曲はザ・キュアーの作品の中でも特に目立っている。「『フライデー・アイム・イン・ラヴ』はばかばかしいポップ・ソングだけど、本当にばかげた曲だからこそ実際はとてもすばらしい曲なんだ。俺らしくなくて、とても楽天的で幸せな世界にいる。そうやってバランスを取るのはいいことなんだ」と彼はスピン誌に語っている。

皮肉にもスミスにとって“ばかばかしいポップ・ソング”を書くことは難しいということがわかった。「普段のように心の中から出てくることを書くより本当にばかばかしいポップ・ソングの歌詞を書く方がはるかに難しい。このアルバムの歌詞を書くために何百枚もの紙を使ったよ。媚びるようなものじゃだめなんだ。シンプルでまっすぐな伝わるものじゃなければならない。心の扉を開いてくれるようなばかばかしさもある。俺たちはずっとポップ・ソングをやってきたんだ。ただ時々ポップ・ソングが重くなりすぎる。絶望的になるというか…」と彼は続けた。

この歌詞のコンセプトは、バーに行った時に思いついた。「スタジオの近くのバーで他のメンバーに会っていて、それが金曜日の午後だったんだ。俺は『今までに1週間をテーマにした曲ってあっただろうか』って考えていた。とてもいいアイデアだと思って、この曲を書いたんだ」と、1997年に語っている。

少なくとも歌詞の一部は、ハートから直接出てきたものである。「ぐるぐる回って/いつも大きく一口かじる/最高の瞬間だ/真夜中に君を目にできるのは」この歌詞は真夜中にキッチンにいる彼の妻メアリーに駆け寄っていくのを歌っているのではないかと噂されている。

4. 不注意によるトラブルで収録された曲のテンポが上がった

「フライデー・イン・ラヴ」は元々Dメジャーのキーでレコーディングされたが、収録されたバージョンは不注意でテンポが速くなり4分の1音キーが上がった。「あれは事故だった。俺がバリ・スピード(ピッチ・コントロール)で遊んでいてオフにするのを忘れていたんだ」とスミスは1992年9月にギター・プレイヤー誌に語っている。幸運なことに彼はそのエフェクトの結果を気に入った。「全体のフィールが変わって『ウィッシュ』の中でこの曲だけがコンサート・ピッチに合っていないということがこの曲を際立たせ、異質なサウンドにした。アルバムに何ヶ月も取り組んだ後にピッチが4分の1音ずれたものを聞くと脳が退化した感じがするよ」と続けている。

サンプル
Photo by Ebet Roberts/Redferns

Translated by Takayuki Matsumoto

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