フジロック現地レポ ミツキのパフォーマンスと歌唱は美しい、だが「終わり」は悲しい

ミツキは26日(金)、フジロック1日目のRED MARQUEEに出演した。 (Photo by Kazushi Toyota)

今年2月、2年ぶりとなるジャパン・ツアーを終えたばかりのミツキがフジロックに初降臨。彼女の来日はこれが4度目となるが、実は今年9月7日にニューヨークのセントラルパークで開催されるイベント「Summerstage」を最後に、しばらくライブ活動を行わないという声明が、ちょっと前に出されたばかり。

となると、日本で観るミツキのライブはこれが最後になるかもしれない。それもあってか、開演前からRED MARQUEEはいつもとは違う緊張感が漂っていた。

客電が落ち、前回の単独公演と同様カエターノ・ヴェローゾの「Cucurrucucu Paloma」が流れ出す。後方のスクリーンには「MITSKI」という文字が大きく映し出され、会場は温かい拍手と声援に包まれた。ミツキの大学時代の友人で、過去の作品全てに関わってきたパートナー、パトリック・ハイランド(Gt)を筆頭に、ブルーノ・エスルビルスキー、ジェニ・マガナ(Ba)、マリー・キム(Key)がステージに登場。機材セッティングを始める中、遅れてミツキがステージに現れる。

が、テーブルと椅子が設置されたステージ中央ではなく、左袖に横向きで立ったまま。ただならぬ気配にざわつく中、幾何学的な電子ピアノのアルペジオに導かれ、まずは彼女の2ndアルバム『Retired From Sad, New Career In Business』(2013年)収録の「Goodbye, My Danish Sweetheart」。前回の来日公演では、アンコールの最後に演奏した楽曲である。抑揚の効いたクラシカルなメロディを優雅に歌いながら、徐々にステージ中央へとにじり寄っていくミツキ。そして、曲が終わると同時にようやく机の前までたどり着き、そこで初めて彼女がフロアへ顔を向けると割れんばかりの拍手が巻き起こった。

続いて通算5枚目となる最新作『Be The Cowboy』から、「Why Didn’t You Stop Me?」。ひねりの効いたコード進行がピクシーズを彷彿とさせる、不穏かつエレガントな楽曲だ。機関銃のようなシンセベースの連打が鳴り響く中、椅子に座ったミツキがテーブルの前でシアトリカルなパントマイムをし始める。曲の後半ではテーブルの上に寝そべり、膝を軸にして両足をぐるぐると回転させて見せた。

「こんにちは、ミツキと申します。テント住まいの方、お疲れ様です」と、落ち着いたトーンで話し始めると、会場は完成と笑いに包まれた。「今日はこんな調子でどんどんやっていきますよ〜。では、戻ります」と言い終えるとすぐに、グラビアのモデルのようなセクシーポーズで静止。そのままの格好で「Francis Forever」へなだれ込む。バックの演奏は中盤に向けて徐々に盛り上がっていき、前作『Puberty 2』(2016年)に収録されたダムドばりのパンクチューン「Dan The Dancer」では、スフィンクスのようなポーズのまま足をばたつかせる。両膝に黒いサポーターを装着し、ピッタリとした黒のショーツに白いTシャツという出で立ちで、パントマイムとも、コンテンポラリー・ダンスとも、ヨガともエアロビクスともいえない(あるいは、そのどれともいえる)、奇妙でどこかコミカルな動きをしながら美しいメロディを歌い上げるという、これまで見たことのない光景に呆気にとられるばかりだ。

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