コートニー・バーネットが語る、「絶望」と向き合ったアルバム制作秘話

27(土)フジロックフェスティバルに出演する、コートニー・バーネット(Rolling Stone)

27(土)フジロックフェスティバルに出演する、コートニー・バーネット。アルバム『Tell Me How You Really Feel(原題)』をリリースした昨年春、中傷コメントに対して返答する楽曲や、それぞれの楽曲に込めた思いなどの制作秘話を、ローリングストーン誌に語ってくれた。

コートニー・バーネットが最初のフルアルバム『Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit(原題)』を2015年にリリースしたあと、友人から転送されたコメントを読んだ彼女は笑ってしまったという。それは「ABCスープを一杯食べたら、あんたよりも上手な言葉を吐き出せる」というものだった。

「それが面白いって思っちゃった。知らない人が、私は下手だって言っていたわけで、これが頭の片隅に残っていてね。『じゃあさ、それを使ってあげようじゃないの、ふざけんじゃない』って思っただけ」と、ローリングストーン誌に語った。

そして彼女は、そんな気分の悪い一節を「Nameless, Faceless」に入れ込んだ。この一節には、そのコメントへのバーネットの返事だ。「自分を中心に世界がまわっていると思うなら、あんたは考えが甘い」と、続く。新作アルバム『Tell Me How You Really Feel』からのファーストリリースのこの曲は、オスの攻撃性に対する痛烈な攻撃で、コーラス部分の歌詞はマーガレット・アトウッドの『侍女の物語』の一節を言い換えたものだ。すなわち「暗闇の公園を通り抜けたい/女が男を笑えば男は怯える」と。ブリーダーズのキム・ディールが歌うバックコーラスも相まって、キャッチーで元気ハツラツな曲になっているが、一歩間違えば脅迫めいた歌になってしまう。しかし、そんな両義性がこの曲の核心ともいえる。

『Tell Me How You Really Feel』(2018年5月発売)に収録された曲の多くが、魂の探求に関わっている。ただ、バーネットは魂をまだ見つけていないようだ。「はっきりとした方向性はなかった。いつくかの事柄を理解しようとしたし、そうしているうちに最初よりも大きなテーマに変わった」と、バーネットは言う。2017年のカート・ヴェイルとのアルバム『Lotta Sea Lice(原題)』のレコーディングを行う前に今作の作業を始めていたが、彼女曰く、他のプロジェクトでの曲作りで忙しくて作業が中断していたとのこと。またファースト・アルバム『Sometimes I Sit〜』のリリース後、彼女はグラミー、ブリット・アワード、ARIA(彼女の地元オーストラリアのグラミー的な賞)の最優秀新人賞にノミネートされた。「そのせいで相当なプレッシャーを感じたけど、私の場合、一番のモチベーションは自分が自分に課すプレッシャーだと思う。それ以外のことは全部無視しようと決めたし、自分のために興味深いアルバムを作りたいと思ったわけ」と、バーネットが説明する。

最終的にフラストレーションを題材にした楽曲で構成されるアルバムが完成した。彼女はこれを「感情の燃えカス」と呼び、前作『Sometimes I Sit and Think〜』の楽曲よりも現実を見据えた直接的な表現で、さまざまな人間関係を解明している。バーネットはリハーサルルームを手配して作業した。そこでは、机に向かって強制的に歌詞を書いたという。そのあと、プリンスのように楽器を一つずつ弾いて、すべての楽曲のデモを作った。そうやって楽曲の要素をこと細かく確認してから、普段一緒にやっているバンドと共同プロデューサーを再召集してレコーディングを始めたのである。

Translated by Miki Nakayama

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