スピードワゴン小沢が語る、パンク精神で「今、この瞬間」を生きる美学

そう言いながら、少年のように目を輝かせる小沢。マーシーとは言うまでもなく、真島昌利のこと。甲本ヒロトと共にTHE BLUE HEARTSを結成し、現在はザ・クロマニヨンズのギタリスト。「THE BLUE HEARTSは小学校の義務教育で教えるべき」と常々主張する小沢にとって、マーシーは「先生」なのだ。

「マーシーが好きなものを全部知りたくて、映画や本、音楽はマーシーの真似をしたの。昔はそれこそジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ジム・キャロルなどビート文学と呼ばれる本を読んだり、『長距離走者の孤独 』のようなイギリス文学を読んだり。背伸びしてたんだよね(笑)。よくヒロトさんが言ってたのは『あの人の音楽が好き』って思ったら、その音楽を真似するんじゃなくてルーツまで遡れって。だから、フリッパーズとTHE BLUE HEARTSって、やっていることは全然違うけどルーツを遡っていくと共通点があったのかも。そこに同じ『パンク精神』を感じたのかも知れないな」

タバコをくゆらせ、当時を思い出す。そういえば、さっきから彼はひっきりなしにマルボロを吸い続けている。どうやら筋金入りのチェーンスモーカーのようだ。

「1日4箱は吸ってるね。タバコと酒、どっちかやめろともし言われたら酒をやめる。別に好きとか嫌いとかもないし、美味いとも感じてないんだけど(笑)。もう生活の一部みたいになっちゃってるから。そうそう、このあいだ健康診断へ行ったら『70歳の肺です』って言われた。でも全然気にしてないよ」

笑いながらさらに1本くわえる。サブカルチャーにも造詣が深く、最近ではAL(元andymoriの小山田壮平による新バンド)やTHE BOHEMIANSがお気に入りだという小沢が、衣食住などライフスタイルへのこだわりを、ほとんど持っていなかったのは意外だった。唯一あるとしたら「Tシャツの首をハサミで切ること」だという。それもマーシーの影響だ。

「俺の大好きなマーシーが、ずっとTシャツの首を切ってる。だから俺も、中学生の頃からずっとそうやってる。中学生の頃とかパジャマで登校したことがあるんだけど(笑)、パジャマの首まで切ってるからほんと、頭のおかしいやつだったよね(笑)」


Photo by Kentaro Kambe

マーシーへの思いが強すぎる余り、彼の卒業校に電話して連絡先を聞き出そうとしたこともある。「彼のそばにいれば、ロックな生活が送れると思ったんだよ」と恥ずかしそうに述懐していたが、そこまで好きな音楽の道には進まず、バンドを辞めてお笑いの世界に入ったのは何故だったのだろう。

「誘われたから(笑)。ほんと、どうしようと思ってたんだよね。15歳からプータローというか、1カ月働いたら3カ月遊んで暮らすというのをずっと続けて、気がついたら20歳になっていて。いつの間にか周りの同級生たちは、大学へ行ったり就職したり。あれ?みんな『ずっとプータローやっていようぜ』って言ってなかったっけ?みたいな(笑)。そうこうしているうちに、NSC(新人タレントを育成する目的で設立された吉本興業の養成所)が名古屋に出来て。幼馴染に誘われるがまま入ったら、そこで潤と知り合うんだ」

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