スピードワゴン小沢が語る、パンク精神で「今、この瞬間」を生きる美学

Rolling Stone Japan vol.07掲載/Coffee & Cigarettes 14 | 小沢一敬(Photo by Kentaro Kambe)

音楽、映画、小説に造詣が深く、10代から持ち続けてきたパンク精神が表現の根っこにある小沢一敬。彼にとってお笑いは衝動そのものであり、その生き方は刹那的でどこまでも自由だ。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載、第14回目のゲストは、スピードワゴンの小沢一敬だ。

Coffee & Cigarettes 14 | 小沢一敬 

「フリッパーズ・ギターが好きな理由? パンクだから」

そう言いながら小沢一敬は、こちらを試すような不敵な笑みを浮かべた。相方の井戸田潤と結成したお笑いコンビ、スピードワゴンの(主に)ボケ担当。2002年の『M-1グランプリ』にて敗者復活戦から勝ち上がり、初の決勝進出を果たしたことで一躍注目を集めた彼ら。中でも「甘い言葉」ネタは、お茶の間に広く認知されるきっかけに。独身を貫き、同期の徳井義実(チュートリアル)らとシェアハウスで共同生活を送るなど、そのユニークなライフスタイルでも知られる小沢は、生粋のTHE BLUE HEARTS好きとしても有名だ。実は、フリッパーズ・ギターの大ファンでもあるという噂を小耳に挟み、その理由を尋ねたときに返ってきたのが冒頭の言葉。即答だった。

「僕は中卒なんだけど、15歳の頃に1つ上の先輩と寮で共同生活をしながら海のそばのホテルで働いていて。その職場には、大学生など年上の人がバイトでたくさん来ていたんだよね。その中の1人に教えてもらったのがフリッパーズ・ギターだった。その頃はまだ、ロリポップ・ソニック(フリッパーズ・ギターの前身バンド)時代だったんじゃないかな。やってることはパンク・ロックではなかったけど、『あ、こいつらパンクだ』と思って好きになったのがキッカケだった」

小山田圭吾(コーネリアス)と小沢健二により結成されたポップ・デュオ、フリッパーズ・ギター。「恋とマシンガン」などのヒット曲で知られ、ベレー帽にボーダーシャツといったフレンチカジュアルに身を包んだ彼らがパンク? と首をかしげる人もいるかも知れない。だが、アズテック・カメラやオレンジ・ジュース、パステルズらに影響を受け、複雑で洗練されたコードをアコギでかきむしりながら、甘い歌声で美しいハーモニーを聴かせる彼らは、形骸化された当時の「商業ロック」などよりも余程ロックでパンクな存在だったのだ。そんな話を切り出すと、小沢の目が光った。

「アズテック・カメラなんて名前が、こういう取材で出てくるとなんだかワクワクしてくる(笑)。俺の中でTHE BLUE HEARTSとフリッパーズ・ギター、それからダウンタウンはパンクなんだよね。なぜなら、『あ、俺はこういうことがやりたい!』って思わせてくれるのがパンクだと思っているから。もちろん、全然やれないんだけど。勘違いさせられちゃうというかさ……。THE BLUE HEARTSやダウンタウンの真似したやつはいっぱいいたけど、誰も超えられなかったよね。ちなみに以前、マーシーと話す機会があって、その時に『小山田くんにはパンクを感じるんだよね』って言ってて。一緒だ!と思ってうれしかったな」


Photo by Kentaro Kambe

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