Spotifyが撤回した5つのコンテンツ戦略

Barclays Centerで開催された製品発表イベントで、Samsungとのパートナーシップについて語るSpotifyの最高経営責任者ダニエル・エク。2018年8月9日、ブルックリンにて。(Photo by Drew Angerer/Getty Images)



「ヘイトコンテンツと悪意ある行動」の取り締まりを発表

Spotifyが映像分野に進出を試みたのは、実はこれで2度目だった。2015年にダニエル・エクは、大手メディアの数々がショートフォームの映像コンテンツをSpotifyに提供すると明かした。そこにはVice MediaやMaker Studiosのほか、Comedy Central、BBC、ESPN、Nerdist、NBC、TED等が名を連ねていた。

しかし2016年10月、スウェーデンのタブロイドBreakitはこの試みを「大失敗」とし、Vice Mediaによる映像コンテンツの視聴回数は皆無に等しいと明かした。同誌の情報源によるとSpotifyは各メディアパートナーとの映像プロジェクトに5000万ドル以上を注ぎ込んだという。

Breakitの報道に対し、Spotifyは「映像プロジェクトに全精力を傾けている」と主張した。しかし現在、これらの映像コンテンツはどこにも見当たらない。ついでに述べておくと、現行のSpotifyアプリの検索ウインドウには「アーティスト、曲、ポッドキャストを検索」というメッセージが表示されており、ビデオのビの字も見られなくなっている。

3) 検閲(2018年)
Spotifyが早々にこの方針を撤回したことは、正しいことをしようという企業努力が世間から理解されないケースの典型だと言えるだろう。

昨年5月、Spotifyの発表は業界を驚かせた。それは同社が、「ヘイトコンテンツと悪意ある行動」を取り締まるというものだった。前者(ヘイトコンテンツ)については容易に理解でき、世間からも好意的に受け止められた。具体的には、人種や宗教、障害、ジェンダー、あるいは性的嗜好を理由に特定の人々に対する憎しみを増長させようとしているとみなされた場合、そのアーティストの楽曲がプラットホームから削除されるというものだった。

しかし後者(悪意ある行動)を取り締まろうとすることは、まさに藪から蛇だった。Spotifyの主張は以下のようなものだった。「アーティストやクリエイターの行動が有害で悪意に満ちているとみなされた場合(例:幼児虐待や性的暴行など)、場合によってはその人物あるいはグループのサポートを拒否する」

具体的なケースとしては、R・ケリーとXXXテンタシオンの楽曲がSpotiyのプレイリストから除外されたことが挙げられる。重要なポイントは、両者は異性に対して忌むべき行動をとったとして世間から糾弾されたが、彼らが実際にそれらの罪に問われたわけではないという点だった。彼らの楽曲をプレイリストから除外したことは人種差別にあたり、Spotifyはまるで裁判官や陪審員のように振舞っているとして批判された。とりわけ強く不快感を示した人々は、過去何十年もの間に不適切な行動や発言を繰り返してきた(主に白人の)ロックスターたちが処罰の対象とならないのはおかしいと主張した。

最終的に、Spotifyは「悪意ある行動」の文言をポリシーから削除し、以下のようなコメントを発表した。「我々の意図は善意によるものでしたが、その文言はあまりに抽象的であり、結果的に混乱と不信感を招いてしまいました。新たなガイドラインを発表する前に、我々のチームおよびキーパートナーたちの意見にもっと耳を傾けるべきでした」

筆者にはいまだに理解できない点がひとつある。楽曲をプレイリストに加えるかどうかを音楽とは無関係の理由で決めることは、はっきり言ってSpotify側の自由だ。「良心のある企業」として認識されようとした意図はわからなくもないが、なぜそういった方針をわざわざポリシーとして公にする必要があったのだろうか?

4) デジタル・ディストリビューション(2018年)
Spotifyは昨年9月、インディペンデントのアーティストたちがサードパーティーやレコード会社を通すことなく、無料で曲をプラットホーム上にアップロードできるサービスを開始した。数百のアーティストが招待制のベータ版を試す機会を与えられたが、ユーザーによるアップロードが基本であるTuneCoreやDitto、 Stem、 Amuse、SoundCloud等のユーザーを取り込もうとする同社の狙いは外れた。「作り手が曲を簡単にSpotifyに上げられるようにしようとしています」そのプロジェクトを任されていたシニア・プロダクト・リーダーのKene Anoliefoは、当時ローリングストーン誌にそう語っている。

発表から数週間後、Spotifyはこの戦略を加速させる動きを見せた。同社はアグリゲーション会社DistroKidの株を取得し(過半数未満)、Spotifyを通じて曲をアップロードすれば、同時にその他の主なプラットホームでも曲が公開されると説明した。DitroKidとのインテグレーションによるこのサービスのローンチについて、同社は「近い将来」としていた。

しかし、続報はなかなか届かなかった。そして9ヶ月後、Spotifyはディストリビューション業からの撤退を表明した。今年の7月1日、Spotifyはベータ版楽曲アップローダーの廃止を正式に発表した。その理由について、同社はこうコメントしている。「少しでも多くのアーティストやレーベルがSpotifyで曲を公開できるようにするには、アーティストのコミュニティと緊密に連携を取っている既存のディストリビューターたちに任せるのが一番だと判断しました」

Spotifyが約1年前にそのディストリビューターたちに宣戦布告したことを考えれば、それが真の理由ではないことは明らかだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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