3. ネオソウルを通過した、魂を震わせるようなボーカル筆者がタッシュ・サルタナに心酔するもうひとつの理由は、その歌声にある。儚くも透き通ったファルセットや、聴く者の魂を震わせるようなシャウトは、同じく95年世代のジュリアン・ベイカーなどに近いものを感じる読者もいるだろう。しかし、サイケデリック・ロックを基調としつつ、フォークにもR&Bにもレゲエにもヒップポップにも違和感なく溶け込む「土着感」は、さすが先住民族・アボリジニの歴史を持つオーストラリア出身といったところか。Tempalayの小原綾斗は、昨年Rolling Stone Japanが行った
インタビューにおいて、彼女の魅力について次のように言及している。
「今インターネットでなんでも音楽が聴ける時代で、電子音楽が増えているじゃないですか。そのなかに、どこかブルース的な要素、土着的なものを取り込んでる若い人たちって実はあんまりいないと思うんです。そういう意味でセン・モリモトやタッシュ・サルタナは若いのにすごいなと思います。そういう音像を古臭く感じさせず、しっかり今の解釈をしているセンスもすごい」。
タッシュのボーカリストとしてのロールモデルを探る上では、彼女自ら編集したSpotifyのプレイリスト「#TUNE」がヒントになりそうだ。そこには同郷のオーシャン・アリーやハイエイタス・カイヨーテといった実力派バンドや、ボブ・マーリー、フリートウッド・マックといったレジェンドと並んで、エリカ・バドゥ、シャーデー、インディア・アリー、エイミー・ワインハウスら多くの女性ソウル・シンガーの楽曲がピックアップされている。特にエリカは全131曲中(7月23日時点)で4曲を選ぶほど大ファンらしく、オランダのラジオ局「3FM」の
インタビューでも「Didn’t Cha Know」をチョイス。ネオ・ソウルの文脈から『Flow State』を聴いてみると、また新たな発見ができるはずだ。
なお、アルバム・タイトルの『Flow State』とは、心理学で「覚醒」と「コントロール」の中間に位置する精神状態のことで、いわゆる「ゾーン」と呼ばれるものだ。つい我を忘れるほどの熱狂と没入感。サマソニでまもなく実現するタッシュ・サルタナの日本初パフォーマンスは、きっと、想像を絶する体験となることは間違いない。
<リリース情報>タッシュ・サルタナ『フロー・ステイト(ジャパン・エディション)』発売日:2019年7月24日(水)
国内盤CD(SICP-6185)
¥2,200+税
歌詞対訳付、ボーナストラック3曲追加収録、オリジナル・ジャケット写真
試聴・購入リンク:
https://lnk.to/TS_FlowStateAW