「ジミヘンの再来」タッシュ・サルタナが神童と呼ばれる3つの理由

タッシュ・サルタナ(Photo by Mairo Cinquetti/NurPhoto via Getty Images)



2. ロック逆境の時代に抗う、驚異のギター・プレイ

同じくサマソニに出演するフランスの鬼才、FKJと同様にマルチインストゥルメンタリストであること/ルーパー使いであることに注目が集まりがちだが、タッシュの驚異的なギター・プレイも人気の秘訣だろう。ここで米ローリングストーンの名物セッション「Take One」に出演した際の動画をご覧いただきたい。溜息が漏れるほど美しいクリーントーンから、リバーブ、ディレイ、エコーを使い分けた空間演出、そしてワウ・ペダルでガツンと歪ませたブルージーなギター・ソロまで、恍惚とした表情でのけぞる姿はギター・ヒーローそのもの。メルボルンの新聞ヘラルドサンは「ジミ・ヘンドリックスと肩を並べる」と賞賛を送っているが、個人的にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズ在籍時のジョン・フルシアンテを思い出してグッと来てしまう。



そんな彼女の真骨頂とも呼べるギター・テクを味わえるのが、このたび日本盤がリリースされたデビュー・アルバム『Flow State』に収録の「Cigarettes」だ。ピンポイントのライブ動画が見当たらないのが残念だが、ホームビデオの素材で構成されたMVでは、幼少期のタッシュが子ども用のギターを弾き倒す可愛らしいシーンも確認できる(祖父に貰ったというギターがこれか?)。ムーディーなリフやクラップが印象的なネオ・ソウル調で幕を開けるこのナンバー、3分17秒から堰を切ったように溢れる獰猛なギター・ソロがとにかく素晴らしい。ストリーミング・サービスでは「ギター・ソロがはじまると次の曲にスキップされる」なんて話題が上るほどロック逆境の時代にあって、これほど感情的で引き込まれたソロ演奏は久しぶりである。



もちろん、『Flow State』の聴きどころはそれだけじゃない。ストリングスとアンビエント的な電子音で構築したインスト「Seven」では、ボノボのようなトラックメイカーに通じるセンスを発揮しているし、ジャジーなエレピに乗せて「救いを得るのにあなたの愛は要らない」と吐露する「Salvation」の小気味良いグルーヴや、絶叫ボーカルと泣きのギター・ソロに胸を締め付けられる「Pink Moon」、前面に押し出した粘っこいベースラインがテーム・インパラを連想させる「Free Mind」、そしてフラメンコ風の鬼気迫る超絶&長尺ギターに唸らずにいられない「Blackbird」(ジョン・バトラーでいう「Ocean」と似た位置付けかも?)など、その音楽的引き出しの多さ/プレイヤーとしてのレンジの広さには驚かされるばかりだ。

タッシュの目下の新曲は、シドニーの男性シンガーソングライター、マット・コービーとのコラボレーション・ソング「Talk It Out」。管楽器のまろやかなアンサンブルと、タッシュお得意のビートメイクに乗せてアダルティーなデュエットを披露しているのでチェックしてほしい。


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