旧東ドイツ出身のロックバンド、ラムシュタインが祖国の「今」を歌う理由

ラムシュタインのヴォーカル、ティル・リンデマン(Photo by JENS KOCH)

挑発的な音楽でありながらドイツで最も成功したロックバンド、ラムシュタインが10年ぶりに最新アルバム『Rammstein』を発表。常に賛否両論を呼ぶ彼らをローリングストーン誌ドイツ版が取材した。

25年間、世界中に愛と破滅の音楽を提供してきたラムシュタインのサウンドは燃え盛る炎のようであり、彼ら自身火薬のようなバンドとも言える。

「リスナーを驚かそうと思っているわけじゃない」と、キーボーディストのフラケ・ロレンツが言う。「衝撃は人を麻痺させる。そうなると人は反応できなくなる。それは嫌なんだよ。人を刺激したいし、それによって人を動かしたい」と。





2019年春のとある水曜日。ベルリンのティーアガルデン内の撮影スタジオに我々はいる。目的は、10年の沈黙を破ってリリースした7枚目となるセルフタイトルの新作アルバムについて語ってもらうため。かつてはこういう状況を「カムバック」と呼んだ。しかし、最近はもうカムバックなどと言わない。今日のポピュラー・ミュージック業界では、どんなミュージシャンもバンドも、虫の息でもまだ息をしていればどこかで必ずシーンに戻ってくるのだから。

今回のインタビューは非常に稀なチャンスといえる。ラムシュタインは取材を受けないことで有名なのだ。音楽制作とコンサート以外で彼らがファンに何かを伝える手段は、ここ最近は自作のメイキング系ドキュメンタリーだ。かつての彼らはプロモーションツアーを行い、取材を受けてはいたが、ある程度経つと我慢できなくなり、最後はお決まりのようにインタビューをキャンセルしていたと、朝食を食べながらフラケが言う。

前身バンド、フィーリングBを東ドイツで10代の頃に仲間とスタートさせた陽気なギタリストのパウル・ランダースは、現在54歳で、ラムシュタインの最年長者ティル・リンデマン(ヴォーカル)の次の年長メンバーだ。後ろでは、リトル・リチャードやジェリー・リー・ルイスなどの古いロックンロールがかかっている。ランダースの皿には牛ひき肉が山盛りになっていて、これをクリスプブレッドの上に乗せて食べている。あまり健康的ではないが、こうやって食べるのが好きなのだ。それに、スイスから輸入したクリスプブレッドやクラッカーなどを1日に1袋必ず食べるという。「背中にクリスプブレッドのタトゥーを入れるべきかもな」と、くずをこぼしながらランダースが言う。他の人たちは忙しすぎて、彼のそんな言葉など聞いてもいない。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE