旧東ドイツ出身のロックバンド、ラムシュタインが祖国の「今」を歌う理由

ラムシュタインのヴォーカル、ティル・リンデマン(Photo by JENS KOCH)



この10年間、ラムシュタインは何をしていたのか?

まずはベーシックな質問。ラムシュタインはこの10年間、何をやっていたのか?

「時折1年間の休暇を取っていた」とランダースが話し始める。「これは自分たちがのぼせ上がらないようにするためであり、人として生活するためだ。前作リリース後のツアーのあとで休暇を取り、その休暇明けに再会したとき、メンバー同士が声を揃えて『なあ、もう1年休もうぜ!』と言った」とランダース。この休暇がメンバー全員に良い影響を与えたのだが、この次に集まったとき、水面下で葛藤がぶくぶく泡立っていた。「人間関係の面でいくつかトラブルがあって、しばらくの間、同じ部屋に全員が集まるのが難しい時期もあった。音楽制作はセックスと似たところがあって、独りよがりでは上手くいかないのさ」。そして、全員の気持ちが落ち着くまでもう1年必要だった。

そうこうしているうちに2015年になり、バンドにとって新作を出すタイミングが訪れた。ランダースは言う。「個人的には『くそっ、このタイミングですべて整理して終えられたらいいのに』と思うことがたびたびある。しかし、バンドとしてある程度の責任感を覚えるわけだ。少なくともあと1枚はリリースしなきゃいけないって思うから、まだ終わることはできない」と。しかし、今回に限って彼らは多くのことを変更した。これまでラムシュタインのセッションをずっと導いてきたスウェーデン人プロデューサーのジェイコブ・ヘルナーをやめて、新しいプロデューサーを雇った。スタジオも新しくして、アプローチも一新し、それ以外にも新しくしたものが多々ある。ルーツに戻った。かつての共通点に戻り、彼らのもともとの存在理由に立ち返った。

「でも、初めての森に入ると道に迷うことがある。時間がかかった理由がそれで、かなり過酷な作業だった」とランダース。

その過酷な作業が結実したセルフタイトルの新作は、バンドが暗闇で自分たちのルーツを探し当てようと、地中深く掘り起こしているように聴こえる。


ラムシュタインのキーボード、フラケ・ロレンツ(Photo by JENS KOCH)

新作に収録されている曲の中には、教会での不可解な暴力を扱った「ツァイク ディッヒ(姿を見せろ)」、肉体・痛み・美の「タトゥー」、子供の頃のトラウマを描いた「プッペ(操り人形)」、そのものズバリ、セックスを描いた「セックス」がある。ここで扱っているテーマは、言い換えれば、宗教や道徳上の逸脱であり、肉体的にも精神的にも限界に押しやられた人の意識だ。

Translated by Miki Nakayama

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