全米の大麻合法化を阻止する3人の共和党議員

大麻合法化の法案を米民主・共和両党が支持――だが一部の共和党上院議員を突破しない限り、法案はまたも水泡に帰すことに。(Photo by Erik Mcgregor/Pacific Press/ZUMA)

大麻合法化を支持する大きなうねり。連邦規模だとハードルが高いのはなぜ?

Capitol Hill Clubは米ワシントンD.C.の繁華街、キャノン下院議員会館のはす向かいにある。真っ白なテーブルクロスと木彫りの象の置物がトレードマークのこの会員制クラブは、主に共和党寄りのロビイストや議会スタッフ、にわか政治家らのたまり場だ。だが蒸し暑い6月のとある日、民主党のロビィストがランチに現れた。

サフィラ・ガルーブ氏がここに来たのは、共和党のロビイスト、ドン・マーフィー氏と大麻合法化に関する打ち合わせのため。フライド・スイートポテトを囲みながら、マーフィー氏(元メリーランド州選出の共和党下院議員で、15年以上もマリファナ政策に取り組んでいる)とガルーブ氏は、連邦議会で大麻支持を呼びかける戦略を練っていた。マーフィー氏も言うように、民意はついにここまで来たのだ。

かつて2017年には、トム・コットン議員をはじめとする上院議員から、自分たちの州政府も有権者も大麻など意に介していない、と面と向かって言われたという。「タイミングの問題でしたね。当時まったく支持が得られなかったのは、議員の皆さんには時期尚早だったんです。そこから流れが変わったと思いますよ」

現在、アメリカ国民の60%以上がマリファナの完全合法化に賛成している。11の州とワシントンD.C.はすでに成人の大麻使用を合法化。さらに36の州が、何らかの形で医療用または嗜好品としての大麻使用を認めている。

こうした大衆の支持により、今会期中はかつてないほど多数の大麻関連法案が議会に提出された。例えば、銀行取引を容易にするSAFE Banking法。州政府に大麻合法化の権限を与え、連邦政府の介入から保護するSTATES法。Veteran Equal Access法は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療から鎮痛管理まで、退役軍人の治療に対する大麻活用法の研究に大きく扉を開くものだ。

そしてこの問題は、着実に党の枠を超えている――共和党のコーリー・ガードナー上院議員(コロラド州代表)とランド・ポール議員(ケンタッキー州代表)はかねてよりマリファナ合法化を支持しているし、大麻議員集会は民主・共和両党からそれぞれ2名ずつが共同議長を務めている。

だが、大衆や党派を超えた支持だけではマリファナの完全合法化には至らない、とガルーブ氏は言う。「共和党幹部――上層部内部――の温度はまだ十分熱していないのが現状です」

大麻法案が可決するか否かを決定する重要人物は、実はそれほど多くない。大麻関連連邦法の門番として、ロビィストや支持者、議員らの間で度々名前が挙がるのがこの3人――共和党のマイク・クラポ上院議員(アイダホ州代表)とリンゼー・グラハム上院議員(サウスキャロライナ州代表)、そして上院多数党院内総務のミッチ・マコーネル上院議員(ケンタッキー州代表)だ。

彼らが、今会期中どの大麻関連法案を上院議会の本会議にかけるか――あるいは却下するか――を判断するのだ。

「私は以前、市政でも連邦政府でも、法案可決には半数プラス1の票が必要だと思っていました」とマーフィー氏。「でも実際はそうじゃない。1票プラス半数なんです」 マーフィー氏いわく、その1票とは議会委員会の委員長だ。

法案を上院本会議にかけるには、まず下院で可決された受けた後、上院議会委員会で審議にかけられなくてはならない。だが、委員会が必ず法案を審議するという保証は全くない。それはすべて、委員長次第なのだ。

Translated by Akiko Kato

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