アイアン・メイデンの「価値」はファンが決めること スティーヴ・ハリスが語るその軌跡

アイアン・メイデンのベーシスト、スティーヴ・ハリス(Photo by Gonzales Photo/Terje Dokken/PYMCA/Avalon/Universal Images Group/Getty Images)



「メイデンの音楽を聴く多くのファンの第一言語が英語ではない点を、俺は昔から真剣に考えている」

―曲作りをするとき、最初に浮かぶのは曲ですか? 歌詞ですか?

9割が曲だ。一番大変なのが、実際のメロディに歌詞をはめ込む作業だよ。それというものも、俺が作るメロディはきっちり決められているから。ジャズみたいにちょっと曲げるってことができない。だから、メロディにきっちり合うシラブル(音節)の単語に変えないとダメなことも多々ある。メイデンの音楽を聴く多くのファンの第一言語が英語ではない点を、俺は昔から真剣に考えているんだよ。でも、たとえ英語が母語じゃないとしても、最初に耳を奪うのはメロディだ。歌詞を覚える前にね。だから俺は、意味のない言葉遊びじゃなくて、ちゃんとした意味のある良い歌詞にしようと決めているんだよ。



―今回のセットリストで驚いた曲が「イカルスの飛翔」です。これはリード・ヴォーカルのブルース・ディッキンソンとギタリストのエイドリアン・スミスが作った曲で、ディッキンソンは本(シンコーミュージック刊『ブルース・ディッキンソン自伝』)の中で、スタジオ内でこの曲のテンポであなたと意見が対立したせいで、それから30年間ライブでプレイされることがなかったと述べています。これは本当ですか?

それはね、長い歳月リタイアしたままの楽曲がたくさんあるし、俺たちはときどき引っ張り出して演奏するわけだ。「イカルスの飛翔」の場合、あのとき、俺はテンポが少し遅いと思った。だから、今ライブでやっているバージョンはあれよりも数段良い……と俺は思う。最初にレコーデイングしたときにこのテンポでやるべきだったよ。今ではこの曲をプレイするのが楽しい。ちょっと毛色の違う曲だし、ライブではそういう曲をやると楽しいんだよ。

「ウエイステッド・イヤーズ」も同じだった。ある意味、俺たちらしくない曲だったのさ。エイドリアンは俺にも聴かせないで、この曲をテープの終わりの方に隠していたんだ。そして「これは合わないと思う」と言うものだから、俺は「いい曲ならどんな曲でも合う」と言い返した(笑)。あの曲は判断がちょっと難しいと思うが。

―メイデンのアルバムであまり好きではない作品はありますか? 『ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイイング』はほとんどプレイしていないようですが。

俺たちが特定のアルバムの曲をプレイしないからって、それを深読みするのはよくないね。あのアルバムにはかなり強力な曲がいくつか入っていると思う。それに、他のアルバムに収録された楽曲よりも弱いと思われている楽曲も当然あるわけだ。『ノー・プレイヤー〜』の曲なら、俺はそのほとんどを喜んでプレイするよ。あれはかなり強力なアルバムだと思うもの。

―最後にレガシーについてですが、アイアン・メイデンは2004年以来ずっとロックの殿堂入りする資格を持っているのに、未だに殿堂入りを果たしていません。それをどう解釈していますか?

殿堂入りしていなくてもべつに気にならないし、そういうことを考えることもない。誰かから賞をもらったり称賛されたりするととても嬉しいけど、そういうことを求めてこの仕事を始めたわけじゃないから。一つも賞をもらえなくても心配で眠れなくなるなんてことは絶対にない。ロックの殿堂だけじゃなくて他のどんな賞でも同じだよ。「この賞が自分に相応しい」とか思うこともない。俺たちが作ったものが評価されたら、それはそれでいいし、評価されなくてもべつにいいってことだよ。



Translated by Miki Nakayama

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