アイアン・メイデンの「価値」はファンが決めること スティーヴ・ハリスが語るその軌跡

速弾きを目指した理由

―速弾きを目指した理由は何ですか?

俺たち全員、生粋の速弾きアーティストだと思う。みんなで「じゃあ、これから速く弾こうぜ」なんて話し合って決めたわけじゃない。最初にアドレナリンありきさ。それをステージに持って行くと、レコーディングしたときよりも演奏の速度が上がってしまう。速くなりすぎて手に余ることもあるけど、ライブでのエネルギーというのは本当に素晴らしいんだよ。とにかく、速弾きは前もって計画していないってことだ。

―『The Soundhouse Tapes』から3年経たないうちに、バンドがブレークするきっかけとなったシングル曲「誇り高き戦い」を作りました。ご自身もアメリカ西部との特別な結びつきを感じますか?

俺たちはいつも西部劇の映画や本の世界に憧れていたんだ。俺はいろんなことに興味を持っていたけど、あの曲を作った時点でまだアメリカという国に足を踏み入れたことがなかった。でも昔ルイス・ラムール(西部劇の作家)が書いた本をたくさん読んでいて、彼の小説にインスパイアされたんだ。とくに、あの曲の最初の数行の歌詞は、明らかに西部劇の本を読んだからこそ生まれたものだ。あの頃は映画で見て知ることが多かったけど、あとで気づいたのは、俺があの頃思い描いていたアメリカはアリゾナだったってこと。サボテンと乾燥した大地に生きる人々みたいな(笑)。



―あの曲にはアイアン・メイデンの十八番と言える速いリズムが入っています。あれは、西部劇に登場する馬みたいなイメージで作ったのですか?

ああ、そうだと思う。自分では意識していないにしてもね。何らかのイメージを創造しようとするとき、創っているのは感情であり、雰囲気なんだよ。「明日なき戦い」も同じで、登場人物たちは死地に足早に向かっている。きっと、自分が想像するシナリオ通りの旅路をイメージするとあの曲がぴったり合うから、みんなに好まれるんだと思うな。

―では「明日なき戦い」のインスピレーションは何ですか?

(1854年のクリミア戦争中の)軽騎兵の突撃さ。命令を受けて戦地に向かって戦う人物というイメージだ。あの戦争があった時代は戦うことを誰も疑っていなかった。疑うことが許されなかったからね。どんなばかげた戦いでも、馬に乗って戦場に行かなければならなかった。そして、自分に火を吹く大砲に向かって突撃しなきゃいけなかったのさ。戦争中というのは、平常時では思いもつかない狂った命令を出す連中がいたし、俺たちの曲ではそれをテーマにしたものがけっこうあるよ。

―長年戦争に魅了され続けている理由、また戦争をテーマにした楽曲が多い理由は何だと思いますか?

子供の頃から歴史が大好きだったんだ。得意な学科も歴史だったから、そういうところからインスピレーションを受けていることが多い。あとは、人間が同じ人間に対してできる酷い所業や、普通の一般人が平常時なら絶対に陥らない状況に陥った時の状況に強い興味を抱いていることもあるね。自分の国を守るためにやるべきことを率先してやっている人たちを尊敬するよ。

―今回のツアーでは「魔力の刻印」も演奏するようですが、この曲の悪魔的なイメージのせいで、80年代にはアメリカの極左勢力と一悶着ありましたよね。あの曲はどうやって出来たのですか?

映画『オーメン』もインスピレーションの一つだけど、大きかったのは(ロバート・バーンズの)『タム・オー・シャンター』という詩だ。とにかく、昔から読書とホラー映画が大好きなんだよ。

Translated by Miki Nakayama

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