BiSHサウンド生みの親、松隈ケンタが語る「進化」と「福岡移住」の意味

SCRAMBLES代表、松隈ケンタ(Photo by Takuro Ueno)



曲のイメージを伝える「アドバイス」の中身

─松隈さんがヴォーカルの説明やイメージを伝えるときに使う比喩って完全に直感だと思うんですけど、それは曲を作っているときからあるイメージなんでしょうか?

松隈:僕はバンドをやっていたので、CDよりもライブ、あとはMVとかの視覚的な方向に意識があって。渡辺くんはCDをすごく聴き込んで育ったけど、僕はCDを聴くというより、音楽をプレイする側の人間だったんです。音楽ってライブとか映画とか物語の中で流れてくるものみたいな感覚で。だから音作りする時は、映像と一緒に僕の中にある画をイメージとして持っているかもしれないです。

─具体的には、どんなアドバイスをされているんでしょうか?

松隈:グランドキャニオンに立って空撮ヘリから撮られているような感じで歌ってとか(笑)。感情を入れて欲しいときは「今までの恋愛で理不尽な別れ方したでしょ?」とか言うと、女の子はかなり表情が出るんですよ。僕のポリシーとして現実的なことは全く言わないというのを決めていて。「声が出ていないね」と言う言葉はアーティストにとってプレッシャーになる。1番のNGワードは「緊張しているよね?」ですね。僕は逆に「緊張してないね」って言います。音をただ録っているというより、そういうメンタル的なところを考えながら、そこから出てくるいいものを拾い集めるのがプロデューサーだと思っている。そういう意味で、こちらのイメージに沿って歌わせるためにどうするかとは考えていないですね。

─そういう積み重ねから、松隈さんのBiSHへの信頼関係が生まれているんでしょうね。

松隈:最近思うのは、逆もあるんじゃないかって。BiSHのメンバーが、俺のことをディレクターとして気持ちよくできるように雰囲気を作って盛り上げてくれているのかもしれない。そこは、みんなプロになったなって(笑)。自分の場合、明らかな体調不良でもない限り喉の調子が悪いから今日は止めて明日録りましょうとか、気分転換するためにリスケしましょうというのは一度もしたことないですね。必ず1分単位で時間ぴったりに終わらせます。夜10時までって決めたら、1分前まで最大限録れるものを録ろうとする。その代わり、調子悪いときはあらゆる手段で和ませたり、力まないように歌わせたりするのがディレクターの仕事だと思っているので。

─「O・S」や「CHOP」、最後の「GRUNGE WORLD」は、これまでのBiSHの曲のメロディラインと方向性が違って、とても新鮮でした。

松隈:そこがコ・ライティングのよさだと思います。世の中のほとんどの作曲家はメロディから作って、それに対してトラックを誰かが作る。そうすると曲に統一性もなくなるし、結局メロディが似てくるんですよね。僕らの手法は全く逆で、トラックを先に作るんです。僕の理想通りのトラックを先に作るときもあるし、全くフリーで作ってくれというときもある。そうして作ったものに、どういうメロディをつけていい曲にしようかって。イントロなのか、Aメロなのかも分からないような、むちゃくちゃなコード進行って、普通の人だったら曲に仕上げられないと思うんですよ。でも俺らの場合は逆で、それだったらここにシャウトを入れようとか、メロディを入れようとか、今までにないものが作りやすいので、今のとこそこに無限感はありますね。







─それはすごいことですね。

松隈:トラックを作る人には、まずいろんなお題を投げるんです。イノシシの気持ちでとか、宇宙戦争という題材でとか。そうやって出来上がってきたトラックに僕がメロディをつけていく。このスタイルだったら無限に作れるなと思いますね。誤解している人もいると思うんですけど、コ・ライティングって一緒に作るという意味なんですよ。中田(ヤスタカ)さんや小室(哲哉)さんは1人で全部やっているけど、そっちの方が実は特殊で。SCRAMBLESの特徴はトラックから作るということがポイントですね。メロディからは「遂に死」は絶対生まれない(笑)。



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