高速道路のジャンクションのような構造、鳥居真道がファンクの金字塔を解き明かす

「ゲロッパ」「ゲローナ」に続いて耳に飛び込んでくるのは既に言及した3拍目に演奏されるギターの「チャーラ」という付点8分音符と16分音符のフレーズです。最後の16分の箇所は次の4拍目からフライングして出て来たようなところがあります。ギターのフレーズに足をかけられて躓いてしまい、Gが体にかかったかのような感覚です。これは1拍目と2拍目のカッティングが前振りになっているからこそ効いてくる技といえます。拍子に合わせて小気味よく1歩目、2歩目を繰り出し、優雅に3歩目を決めて、4歩目を出そうとしたところで足をかけられるという流れです。

現在、躓いて体が強ばっている状態です。そこに間髪を入れず響くのが「トッ」という軽いけれども芯のある乾いたスネアの音です。一度この音を自分がドラマーの握るスティックになったと思い込んで聴いてみてください。スネアの打面に弾き返されてトランポリンさながら飛び跳ねているかのような気持ちになりませんか。スネアを合図に緊張から一気に解放されて空中を舞ったのち、重力に導かれてトランポリンに着地したところで、JBの「ゲロッパ」が飛び出してきてスタートに戻る。そんな構成になっています。4拍目のスネアで跳ね上がり、放物線を描きながらJBがいうところの"The One"に向かっていく感覚がJB流のファンクの重要なポイントです。この「ゲロッパ」「ゲローナ」「チャーラ」「トッ」という一連の合いの手が「Sex Machine」の目鼻立ちだと考えています。そのように意識してみると「Sex Machine」のグルーヴを支配しているのがブーツィー・コリンズのベースであることが逆説的にはっきりしてくるのがおもしろいところでもあります。さらにいうと、JB流のファンクには図と地という区別がないことがわかるかと思われます。

私がギターキッズだった頃は、ファンクって地味なフレーズの繰り返しばっかりでつまんねぇのと思っていた節がありましたが、ギター以外の楽器やリズムについて興味を持つようになってから改めて聴き直してみると、あまりの躍動感に驚かされたのでした。ポップスやロックが3分かけてジェットコースターを一周するのに対して、ファンクはとてつもない速度で何十周もする音楽です。しかもいきなりクライマックス。リズムに関する情報量の多さにはいまだにクラクラします。

まだまだ言及したりないことがたくさんあるのですが、JBの"Can we hit it and quit?"という呼びかけに対して"Yeah!"と答えて終わりにしたいと思います。Hit it!



鳥居真道



1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。Twitter : @mushitoka / @TRIPLE_FIRE

◾️バックナンバー
Vol.1「クルアンビンは米が美味しい定食屋!? トリプルファイヤー鳥居真道が語り尽くすリズムの妙」

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