極悪非道なレイプ犯に「将来の可能性」はあるのか? 判事の裁定めぐる不条理

グレンリッジ事件の被告たちの今

16歳の加害者の評判を保護するというトロイアーノ判事の願いは叶えられた。加害者の名前はいまも公表されていない。彼はこの先も、未来の雇用主や恋人が彼の名前をググって検索結果に恐怖でおののき、一体どうしてこんないい人がこんな恐ろしいことをやってのけたのかしら、と首をかしげるような場面に遭遇することはない。

だが、グレンリッジの少年たちにはこうした幸運は訪れなかった。彼らの名前は公的記録にしっかり残され、彼らの犯罪は今後一生自分たちについて回る。3人の少年――ケビン・シャーザーとカイル・シャーザーの双子の兄弟、クリストファー・アーチャー――は第1級加重性的暴行で有罪判決を受け、最高15年の懲役を言い渡された(最終的にはその半分しか服役しなかったが)。被害者が思いを寄せていたとみられる4人目の加害者ブライアン・グローバーは、他の少年たちにそそのかされて彼女を地下室へおびき寄せるおとり役を務めたが、共謀罪1件で有罪判決を下された。

刑の一環として、シャーザー兄弟とアーチャーは州の性犯罪者データベースへの登録が義務付けられた。彼らの氏名と顔写真はネット上で簡単に見つけられる。物憂げな、しわの寄った無精ひげの顔は、1989年に法廷から出てきた当時のこざっぱりした白人好青年とは程遠い。当時の写真と、今やすっかりオジサン化したグレンリッジのレイプ犯の顔写真を見比べて、苦労の跡や失われた可能性に思いをはせる人もいるかもしれない。


ケビン・シャーザーと双子のカイル・シャーザー(22歳)、ブライアン・グローバー(21歳)、写真左に一部隠れているのがクリストファー・アーチャー(21歳) シャーザー兄弟とアーチャーは第1級加重暴行で有罪、グローバーは第3級共謀罪で有罪(Photo by AP Photo/Dan Hulshizer)

だが、もしグレンリッジ事件から何か学ぶことがあるとすれば、それはおそらくこの少年たち――知的障害の少女をバットで犯したと豪語したのみならず、悪びれる様子もなく、犯行を繰り返そうとしていた少年たち――彼らのようなその他の少年は、そもそも初めから大した可能性を持ち合わせていなかった、ということかもしれない。



Translated by Akiko Kato

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