【ネタバレ】『ストレンジャー・シングス 未知の世界 3』レビュー「変化の夏を鮮やかに描く充実作」

「時間」と「チームワーク」

今シーズンでは、少年少女たちが成長したことで、キャラクター間にも緊張感が生まれている。マイクとルーカスは常にイレブンとマックス(セイディー・シンク)を怒らせ、そのあとに謝っている。また、彼女のいないウィルはガールフレンドのことで盛り上がるマイクやルーカスを醒めた目で見つつ、かつてのように『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲームで一緒に遊びたがっている。ダスティンは科学の課外活動から戻ってくると、ユタ州に住む美人のガールフレンドができたと自慢し、親友になったスティーブ(ジョー・キーリー)に優越感を感じる。そしてそのスティーブは大学進学に失敗し、アイスクリーム店で一緒に働くロビン(ユマ・サーマンとイーサン・ホークの娘マヤ・ホーク)を意識しながら、日々を淡々と過ごしている。マイクの姉ナンシー(ナタリア・ダイアー)とウィルの兄ジョナサン(チャーリー・ヒートン)の2人の恋愛に試練が訪れるのは、ナンシーがホーキンスの地元紙でインターンとして悪戦苦闘している時だ。

こういったことすべてに生かされているのが、メインキャラクターたちと一緒に視聴者が過ごしてきたこれまでの時間と、役者の間で長年にわたって育んできたチームワークだ。たとえば、ダスティンとスティーブがこの番組の最も魅力的で楽しいコンビになると誰が考えただろうか。政府の科学研究所で育ったイレブンは純真であるがゆえに、しばらくの間はこの多彩な世界に馴染めないでいる。一方で、マイクは好きな女性の心理を理解しようと葛藤するがその結果、つい感情的になってしまう。その対比もある種のコミカルさを持っている。こういったことも視聴者と過ごしてきた「時間」、そして俳優同士の相性があってこそ深みを持たせることができる。

プロットは話が進むにつれ入り込んでいき、裏側の世界の生き残っていたモンスターや私たちの世界と裏側の世界の間にある亀裂を利用する新登場の悪役が絡んでくる。しかし、デモゴルゴンやマインド・フレイヤーの存在そのものはそこまで重視されていない印象。多くのキャストを小さいグループに分けたり、本シリーズの豊富なポップカルチャーの引用を関連づけるための<マクガフィン>である。

Translated by Koh Riverfield

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