プロレスラーMAOは何故、高木三四郎を自動車で轢くのか?

“デタラメさ”を追求するためには、社長を轢くことも辞さず

MAOがデビューした当時のDDTは、恒例となった両国国技館に加え、さいたまスーパーアリーナ(コミュニティアリーナ)にも進出したほか、新たな試みとして若手主体のサブブランド団体「DDT NEW ATTITUDE(DNA)」を設立するなど、勢力を大きく拡大させていた。同時に、団体としての“ファイトスタイル”も大きな変革を迎えた時期にあたる。

MAO:僕がデビューしたころから、従来のエンタメ路線に加えて、竹下(幸之介)さんを中心にアスリート志向の高い「強いDDT」へのシフトが加速していくんですよね。プロレス団体としての成長を考える上では自然な流れだと思うんですけど、一方で僕が衝撃を受けたウェポンランブルのような“デタラメさ”が、以前のDDTに比べ薄れてきたと感じるファンも多かったはず。僕自身も、そこにジレンマを感じていましたし。


(C)株式会社DDTプロレスリング

“強さ”と“デタラメさ”を兼ね備えた稀代のゴールデン☆スター、飯伏幸太はMAOとすれ違うようにDDTから巣立っていた。そこで照準を当てたのが、選手としてはほぼ一線を退き「大社長」として経営手腕を振るうことに注力する高木三四郎だった。

MAO:ファンが求める“デタラメさ”が薄れているなら、自分ら若手がそこを再び盛り上げないとダメだなって。とはいえ僕らの世代って、やっぱり上の人達に比べるとマトモじゃないですか(苦笑)。そもそも“デタラメさ”って、教わって得られるものではないし。だから高木さんを無理やり引っ張り出して、僕が憧れたDDTの“デタラメさ”を肌で直接感じるしかないと思ったんです。


(C)株式会社DDTプロレスリング

俺がやらなきゃ誰がやる。それからのMAOは、ハードコアマッチや路上プロレスなどで、高木を相手に“あの頃のDDT”を想起させるハチャメチャなファイトを展開。なかでも、2018年の新木場1stリング大会でみせた、試合中に社用車のワゴンで高木三四郎を轢く暴挙は、ネットニュースにも取り上げられる話題となった。

MAO:会場の外に止めてあったワゴンを見て、これで会場に突っ込んだら面白いだろうなぁとヒラめいて(笑)。雪国出身の人ならわかると思うんですけど、雪道発進のテクニックってのがあるんですよね。短い距離で一気に加速させてから、安全な速度まで急ブレーキで調整するんですけど。観客を巻き込まず、周囲の器物も破損しないで高木さんにだけダメージを与えるために、思いがけず役立ちましたよ(笑)。

現在MAOがひとつの目標としているのが、若手選手だけで開催する路上プロレスだ。

MAO:これぞDDTって誰もが思う試合形式じゃないですか、路上プロレスって。テクニックやセンスが要求されるので、誰でもできるわけじゃないけど、だからこそ自分たちの世代だけで、ここまでできるんだってことを、上の選手やファンに見せたいんです。それができて初めて、DDTの“デタラメさ”を受け継いだと、胸を張っていえるんじゃないですかね。

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