実在しない漫画の1コマを依頼する:スカート最新アルバム『トワイライト』アートワーク制作秘話

今回はスカートのメジャー2ndアルバム『トワイライト』の舞台裏について。(Rolling Stone Japan vol.07より)

どのような言い方をしても無茶な発注をすることになる場合、素直にそのまま言ってしまうのが最善…。トーベヤンソン・ニューヨークのギタリスト、アートディレクター/デザイナー森敬太による連載「リアリティ・バイツ」。第4回は、7月19日に渋谷クラブクアトロでリリースツアーファイナルを迎えるスカートのメジャー2ndアルバム『トワイライト』について。森が手がけたアートディレクション/デザインの裏側が明かされます。

※この記事は2019年6月25日に発売されたRolling Stone Japan vol.07に掲載されたものです。

天高く跳ね上げられた締切が乗った天秤の皿、接地したもう片方の皿に乗っていたのは4週間前に録画したアド街飯能特集だった。我々が巣をかける時空ではそんな光景も存在しうるのです。締切という名の赤黒い鎖を絡ませた足取りで沼地を這い回って10年と少し、常時肌に軋む鎖は片手では収まらない数になり、両足に足かせが食い込もうとも体感質量はもはや自由自在。伝えられた締切から洒落にならないラインを反射的に逆算し鉄球を枕に極楽鳥の夢を見る、これこそが締め切り型人生の醍醐味よガハハハハと独房に響く笑い声、手の平に食い込む爪、鉄仮面の内側で頬を伝う一筋の涙。そのような心象風景と共に横になったり縦になったりしながら小石を積んでいたんですが、本当に危険な空気を魂が察知すると流石に体が勝手に机に向かいます。そのタイミングで完全に目測を誤っていたという絶望感に襲われたのがいまから1時間前、震える体を引きずりミスドにセルフ監禁状態を完成させたのが15分前です。3カ月に1回ペースでこのコラムを書く以外はまとまった文章を書かない私の習慣だと3カ月毎に何も書けない素人に戻り途方に暮れてしまうということに気づかされた巨大な負のエウレカ感と向き合いつつ味のしないアイスコーヒーを吸い、どうしてこんなことになってしまったのか救いの無い脳内検索を繰り返しています。

心当たりがひとつあるのですが、みなさまは連休進行という特殊な重力場の存在をご存知でしょうか。クライアントチェックや印刷作業の停止が長期に及ぶと連休前の駆け込み入稿と連休明けの駆け出し入稿は相互的に作用し、対峙する虎と狼のシナジー、絡まる芋づると繁殖するネズミ、のしかかる作業量は飛躍的に増大しもたらされる巨大な災い、それが連休進行です。6月になったのにいまだその余波に圧迫されていると気がついたデザイナーが出来ることとは何か、それはアイスコーヒーを追加オーダーし目の前のラップトップに日々の泡を叩き込むことのみです。結局のところ例年通り連休中は大量のタスクを抱え多軸回転していたのですが、来訪する作業にはコラムジェニックなものとそうではないものがあり、その中にも告知できるものと凡慮の及ぶ所でない様々な事情により告知できないものがあります。この2軸によって形成される十字散布図の最も素敵な位置に燦然と輝く北極星、それがこの雑誌が棚に並ぶ少し前に発売され、各所より絶賛を浴びているであろう傑作、スカートのメジャー2ndアルバム『トワイライト』です。

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