サイエントロジーの脱会者「第2世代」に密着 カルト集団で生まれ育った苦悩を語る

サイエントロジーの脱会者、クリスティ・ゴードン氏の幼少時代のスクラップブック。(Photo by Justin Kaneps for Rolling Stone)

米国の新興宗教団体「サインエントロジー」の信者として生まれ育った者が脱会すると、ひとつの大きな問題に直面する 「他の人々は、以前のアイデンティティに戻ることができますが、私たちは、何もないところからアイデンティティを見つけようとしているのです」と元信者の1人は語る。

脱会した人たちのことをサイエントロジー教会の信者は専門用語でこう呼ぶ。「banky(=はみ出し者)」「downtone(悪いオーラを発している)」「chargey(負のエネルギーが充満している)」「TRを取り込もうとしない(頑なに受け入れない)」。

だが、脱会者たちは自分たちのことをこうした言葉で呼ぶことはない。彼らは自分たちを「サイエントロジーの子供たち」と呼ぶ。心理学者は彼らを第2世代(Second Generation Adult=SGA)と位置付けている。

クリスティ・ゴードン氏もSGAの1人だ。サイエントロジー教会にどっぷり浸って育った後、最終的に脱会した。SGAは、大人になってから入信し、脱会した「第1世代」の人々とは違う。「第1世代の多くは、自らの選択で家族の下を去ります」とゴードン氏が説明する。「でも私たちの世代は、最初から自由を奪われてしまった。サイエントロジーが両親の心、理性、時間をハイジャックして、私たちの子供時代を乗っ取ったんです」

ゴードン氏は、子供らしいふるまいは何ひとつ教わってこなかった。その代わり、身の回りのことは自分でこなし、それに伴う恐怖や悲しみ、孤独を抑え、サイエントロジー信者が呼ぶところの「身体は小さいが一人前の大人」になるよう求められた。彼女はこうした経験を、他人から天井があると教えられ、頭をぶつけないようずっと身をかがめて生きるような感じ、とたとえた。天井がないのだとわかった時には、背中の曲がった大人になってしまっているのだと。ゴードン氏の考えでは、サイエントロジーを脱会した人々は単に住む場所が欲しいわけではない。そういうケースが多いのも事実だが、人々が求めているのはサポートグループだ。リアルな感情や経験を、言葉で表現できる場所。

サイエントロジーの脱会者が増えるにつれ、ゴードン氏のように声をあげる者も増えている。彼らは教会をカルトと呼び、教会が自己改善を約束するかわりに信者を支配し、虐待していると主張する。教会の中でもとくに熱心な信者からなるエリート集団、シー・オーグが裏で強制労働や監視を行っていると非難し、親には子供が信仰に背いたら縁を切るよう求め、家族を引き裂いているとして教会を批判している。こうした批判がどんどん増えていく一方、教会は一貫して主張を曲げず、自分たちは強制労働や家族分断には関与していないと否定し続けてきた。

教会の教義や修行は、信者が「感情を自由に堪能し、人生をフルに謳歌できるよう」手を差し伸べているのだと主張し、脱会した第2世代のことを、教会に逆恨みする人々が集まった「反宗教的なヘイトグループ」と呼んだ。ローリングストーン誌に対しても、こうしたグループの主張を誌面に掲載して「反サイエントロジーのプロパガンダに迎合している」と非難している。だがゴードン氏にとって、サイエントロジーの子供たちは憎しみや逆恨みがすべてではない。ずっと身をかがめて生きてきた後でも、ねじれを戻してまっすぐ立つことができるのだと、人々に、そして自分自身にも証明しようとしているのだ。

Translated by Akiko Kato

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