物議を醸しているトランプの選挙広告、偽りの内容に世界が驚愕

この広告で流れる動画の画面の左下に、「実際の証言を俳優が再現している」という免責事項が、極小の文字でほんの一瞬だけ登場する。ただし、レガムの指摘どおり、広告では俳優が演じているとされる人物たちが語る言葉が、「実際の証言」だという証拠は一切ない。それこそ、「フロリダのトレーシー」が言っている「トランプ大統領は素晴らしい仕事をしている。彼以上に良いアメリカ合衆国大統領はいない」は、本当はケンタッキー在住のハンクという75歳の男性の言葉かもしれないし、Facebookの匿名の投稿かもしれない。それを映像に合わせて女優が読んでいるだけともいえる。

トランプの選挙キャンペーンが若い女性を選んで、彼女にトランプ大統領への支持を語らせているのは偶然ではない。これまでトランプは女性の支持、特に若い女性の支持を集めることに苦労してきた。政治専門誌ザ・ヒルズとハーバードCAPS/ハリス・ポールが提携して実施している世論調査の6月の報告書で、18歳から34歳までの女性の66%がトランプ大統領の再選に「100%反対」だと発表した。その1ヵ月前に発表されたフォックス・ニュースの世論調査では、女性全体の59%、白人女性の55%、大学教育を受けた白人女性の63%が、トランプの大統領期間がさらに4年間続くのは好ましくないという結果が出ていた。つまり、世間の「フロリダのトレーシー」は非常に少ないということだ。そして、これこそが、トランプ陣営が今回のキャンペーンで、夕暮れのビーチを歩くブロンド女性のストック映像で広告を作った最大の理由なのである。

AP通信によると、この映像の使用料は170ドルということだ。これだけ安価であればトランプ陣営にとって問題にもならない。7月2日には、今年度の第二期だけで合計1億500万ドル(約113億円)の選挙資金を得たと、トランプ陣営と共和党全国委員会が発表した。ちなみに2011年の第二期に、オバマ大統領の再選キャンペーンと民主党全国委員会が得た選挙資金は8500万ドルだった。トランプ陣営の選挙運動本部長ブラッド・パースケイルがニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、今後10億ドルまで集金する計画があり、寄付がやむ兆候がほとんどない現状を鑑みると、目標金額の到達は可能だという。同陣営は、フロリダ州オーランドでトランプが再選の意欲を公言した当日だけで2400万ドル(約25億円)の寄付金を得たと6月に言っていた。

2016年の大統領選でトランプ陣営のデジタル部門を統括したパースケールは、今回の選挙戦で選挙運動本部長に昇進した。彼は今回の選挙戦でもソーシャルメディア上の広告に選挙資金の多くを投入する態勢ができていると言う。事実、先週行われた民主党の大統領候補討論会に先駆けて、トランプ陣営はYouTubeのホームページを買い上げた。Googleのウェブサイトの広告料リストに照らし合わせると、この購入価格は10万ドル(約1000万円)以上になる。

Translated by Miki Nakayama

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