LiSAが「紅蓮華」で示した使命とロックシンガーとしての矜持

私が歌えばちゃんと私の歌になる

―そして、そのあとに「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」を担当するなど、徐々にシーンで頭角を現していったわけですね。最初は作品に寄り添った楽曲をという意識が強かったと思うんですけど、徐々に自分のなかにある感情を楽曲に反映させ始めるわけですよね。それってどういう作業になるんですか?

「Fate/Zero」の前にミニアルバムでデビューしたんですけど、そのときに様々なクリエイターさんと作業をしたんですね。そのアルバムの制作を通して感じたのは、「私が歌えばちゃんと私の歌になるんだな」っていうことで。なので、「Fate/Zero」のときも作品に対する自分の想いを込めなきゃということではなくて、私の声が入ったら私の歌になるんだって思っていました。そこからどんどん自分にできることを増やしていったっていう感じです。 

―でも、歌詞は難しいですよね。一番作品に寄り添っていなければならないものだし、そうなると、例えば戦いがメインのアニメだと、歌詞に対する発想がどうしても過去に書いた同じ系統のアニメの楽曲と近くなってしまうのかなと。そういう場合の歌詞の作り方はどうなるんですか?

私自身も、ロックフェスに初めて出るときとか、アニメと初めて関わるときとか、戦わなきゃいけないときがその時々にあって、そのときの心構えは日々進化しているし、感じることも変わるし、戦う相手も違う。全部が同じ作戦で戦えるわけではないんです。それと同じと言うか、戦いは戦いなんですけど、その戦い方が違うという気持ちです。

―なるほど。ところで、LiSAさんは音楽のトレンドを意識して、自分の楽曲に取り入れることってありますか?

無視はしないです。でも、そういうのを取り入れて新しいことをやっていかなくちゃという気持ちはないです。たくさんの人に自分の音楽を聴いて欲しいという気持ちがある反面、自分の好きなものしかできないっていう気持ちもあって。ウソをつきながらできないんですよ。私はLiSAというものを作ってしまった責任があるし、LiSAという人にしかできないことがあると思っています。でも、自分がカッコいいと思うものが現れたときに、自分の感覚にウソをつかないでできることなら少しずつ取り入れるかもしれないですね。

―最新シングル「紅蓮華」のカップリング「“PROPAGANDA”」は、聴いた瞬間に「マリリン・マンソンじゃん」っていう(笑)。

あはは! わかる方にはやっぱり伝わりますね(笑)。

―笑っちゃうぐらいマンソンですよ(笑)。これは遊び心を意識したものですか?

そうですね。「紅蓮華」がアニメ(「鬼滅の刃」)に寄り添ってきちんとLiSAの役割を果たしてくれたので、そのあとに提示するものとしてはもっと余白がある、みんなが学習しなくても楽しめるものがいいなと思って作りました。

―そこでなぜマンソンが現れたんでしょうか。 

「紅蓮華」で和のテイストを入れたものを作ったので、だったらカップリングは私がすごく好きだった洋楽、パンクのテイストを……って(笑)。

―そう考えたときに頭に浮かんだのが「Rock Is Dead」の“デデデデンデ、デデデデンデ”というイントロだったと。

あはは! マンソンだったらきっとみんなも好きだと思ったんです(笑)。あと、マンソンがライブで演説台に立ってる姿が、私が「ADAMAS」を歌っている光景とすごく似てると思って、「これは『“PROPAGANDA”』、イケるぞ!」って(笑)。

―なるほど(笑)。あと、この曲でもうひとつ驚いたのが、作詞がザ・スターベムズ、元ビート・クルセイダーズの日高央さんということで。

やっぱり、自分が好きなパンクロックなので。「“PROPAGANDA”」は先に曲があったんですけど、聴いたときに「これは日本語だとハマんないな」と思って。なので、サウンド感も精神性も含めて自分が尊敬できる人、いい意味で私に寄り添ってくれない人がいいなと思って日高さんにお願いしました。

―作詞作曲の発注の仕方ってどうやって決めているんですか? チームで考えて決めるのか、それともLiSAさん発信なのか。

基本的には最初に私が言わせてもらいます。でももちろん、私のアイデアが全部実現するわけではなくて、私が渡した種をみんなで育ててくれる感覚です。「じゃあ、これはどう?」ってアイデアを言ってくれる人がいたり。

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