遠藤哲哉という「影」が目指す、DDTの"不安定"な未来

竹下を狙う「影」の追撃。原動力は「媚びない」心だった

皮肉なことに、竹下の飛躍と比例するかのようにDDTもまた、プロレス団体としての勢力を増していく。そうした流れの中、“面白くない”自分の存在を見直す契機となったのが、2016年7月に行われた、挑戦者として臨んだKO-D無差別級王座戦だった。対戦相手は、同王座の最年少戴冠記録を更新し、その後は最多連続防衛回数記録を更新した竹下。ライバル同士の対決として注目された試合で敗北を喫した遠藤は、その場で佐々木大輔率いるヒール・ユニット「DAMNATION」入りを表明する。

遠藤 自分を変えるための決意、みたいな捉えられ方をされてたけど、あの時は、竹下に完敗して自暴自棄な気分になってたっていうのが正直なところ。格好良い言い方をすれば、流れに身を任せるように、カリスマ(佐々木大輔)の誘いに乗っていったわけですよ。


©︎株式会社DDTプロレスリング

しかし、この自暴自棄なチョイスが、遠藤を劇的に変えることになる。コスチュームや髪形、さらには過去の遠藤ならあり得なかったメイクまで。誰もが目を見張り、そして膝を打った容姿の変貌はもちろん、何より大きかったのは、試合に対する意識の変化だった。

遠藤 DAMNATION入りする前の自分を振り返ると、観客を意識するあまり、リング上で思い通りの試合ができてなかったんですよね。たとえば、ムーンサルト・プレスみたいな大技を出すタイミングも、相手へのダメージよりも観客の反応を優先してたから、結果的に避けられたりフィニッシュにつなげられなかったりという場合が多かったし、そういう積み重ねが弱さや焦りにつながっていたんだと、DAMNATIONに加入してようやくわかった。

「媚びるな」。DAMNATION入りを果たした際、リーダーの佐々木大輔から受けたアドバイスは、この一言だったという。

遠藤 観客の声援や応援を意識して闘っていると、反応が薄かったときに戸惑いや隙が生じてしまう、っていうことだと思うんですよね。だから勝つためには、観客に媚びずに自分のやりたいようにやれ、と。実際、カリスマの教えを受けてから、試合のペースや組み立てかたも変わったし、媚びないことで逆に観客を惹きつける存在になれたと思ってるから。

2016年8月にはKO-D6人タッグ王座、10月には佐々木とのコンビでタッグ王座、翌年6月にはKING OF DDTトーナメント優勝。さらに、竹下が保持していた無差別級のベルトにも挑み、奪取には失敗したものの時間切れ引き分けの熱戦を繰り広げるなど、DAMNATION入り直後から始まった、遠藤の猛追撃。2019年4月には師匠格の佐々木大輔を破り、念願のシングル王座戴冠も果たした。

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