アフロビートが21世紀にもたらした「変革」とは? シェウン・クティを軸に歴史を辿る

ネオソウルとアフロビートの相互関係

ナイジェリアで生まれたアフロビートを、21世紀にアップデートさせようといち早く取り組んだのはアメリカのネオソウル界隈だった。コモンの人気作『Like Water for Chocolate』(2000年)には、フェラ・クティにオマージュを捧げた「Time Travelin’(A Tribute to Fela)」が収録されている。この曲にはJ・ディラやクエストラヴなどと共に、前述したフェミ・クティがサックスを吹いているほか、ジャズ・トランぺッターでソウルクエリアンズの一員でもあるロイ・ハーグローヴも起用されていた。

フェミはその翌年に、自身のアルバム『Fight to Win』をリリースしている。同作ではコモンやモス・デフがフィーチャーされているほか、ネオソウル界隈の重要プレイヤーであるピノ・パラディーノ、ジェイムス・ポイザーも参加。同シーンを支えたラッセル・エレヴァドがミックスを担当し、ネオソウルを大胆に取り入れたアフロビートのサウンドは驚きを持って迎えられた。この2作のクレジットを見比べるだけでも、「特別な関係」を築き始めていたシーンの雰囲気が掴めるだろう。




フェミ・クティとコモンによる2013年の共演

そして2002年に、エイズ問題に取り組むチャリティー団体のレッドホットによるコンピレーション『Red Hot + Riot : Music & Spirit Of Fela Kuti』がリリースされる。ここではエイズで他界したフェラへのトリビュートとして、当時の最先端にいたミュージシャンたちが、同作限定のユニークな組み合わせで彼の楽曲をカバーしている。そこには息子のフェミ・クティや、フェラと共にアフロビートを創造した伝説的ドラマーのトニー・アレンという縁の深い面々に加えて、ディアンジェロ、コモン、ビラル、ミシェル・ンデゲオチェロ、ロイ・ハーグローヴ、タリブ・クウェリなどが名を連ねており、ネオソウル及びその周辺のヒップホップとの結びつきの強さがサウンドにも表れていた。

その後も、コンゴの血を引くベルギー人アーティストのザップママがエリカ・バドゥらと共演した『Ancestry in Progress』や、ロイ・ハーグローヴがアフロビートに取り組んだEP『Strength』などがリリースされているし(共に2004年)、クエストラブとエリカ・バドゥは、フェラ・クティのボックスセット編纂にも携わっている。ceroがネオソウルと並行してアフロビートにアプローチしたのは、当然こういった背景とも無関係ではない。


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE