オーディエンスとぶつかり合うHYDEの魂、「刹那」の美学に酔いしれる

ライブ中盤ではピアノソロを挟んで、美しい音色のスローバラード「ZIPANG」が披露された。あれだけステージ中を縦横無尽に動き回りながら、激しく歌い続けるHYDEだったが、この曲が持つ繊細さと壮大さをライブでも見事に表現してみせた。ヘヴィな楽曲を中心に展開されるこの日のライブの中で、「ZIPANG」が果たす役割は非常に大きなものがあったのではないだろうか。

バラードで一呼吸置いたところで、HYDEは「このツアーは想像以上に楽しい。『やっぱりこれだよな?』と思う」と満足げに語る。そして、「もっとポップな曲を作ってりゃいいって声もあるけど、そしたらこんな光景見れないだろ?」「『ANTI』っていうアルバムは設計図みたいなもので、みんながライブに来て初めて完成する。俺たちで『ANTI』を完成させようぜ! 俺たちならできるよな?」と改めてライブの重要性を訴えかけると、フロアからは割れんばかりの声援と拍手が沸き起こった。


Photo by OGURUMA TOSHIKAZU


Photo by OGURUMA TOSHIKAZU

この言葉に続いて始まった最新シングル「MAD QUALIA」では、激しいヘッドバンギングで楽曲の持つハード&ヘヴィなテイストに立ち向かうHYDE。L’Arc〜en〜Ciel、VAMPSを含め90年代半ばから彼がステージに立つ姿を目にしてきた筆者だが、ライブで見せる攻めの姿勢や彼から放たれるエネルギーは年々増しているように感じる。と同時に、心底ライブを楽しんでいる様子も年を追うごとに増しているのではないか……この日のライブで見せる彼の一挙手一投足から、そう感じたのはきっと筆者だけではなかったはずだ。

そして、気づけばステージ上手に設置されたスピーカーの上によじ登ったり、客席に向けて背面ダイヴを試みたりと、相変わらずのやんちゃぶりで観る者の視線を釘付けにするHYDE。ライブ終盤、彼は観客に向けて「悔いを残すなよ!」と何度か叫んだが、先の突発的な行動といいこの発言といい、いかに彼と彼を支持するファンとの間に強い絆が築かれているか、その関係性の強さを再認識するよいきっかけになった。

アンコールではとある海外ヘヴィロックバンドのカバーを、そのバンドにふさわしい演出を交えて披露するといううれしいサプライズも用意。さらに、2000年代半ばに発表したソロ楽曲やVAMPS時代のヒットシングルなども用意され、ある曲では本公演中でHYDEが唯一ギターを抱える場面もあった。このへんは是非、今後各地で行われるライブにて直接確認してもらいたい。

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