大統領訪問拒否の米女子サッカー代表、ミーガン・ラピノーは時代が求めるヒーローだ

女子サッカーW杯フランス大会、対スペイン戦でのミーガン・ラピノー(右)とアレックス・モーガン(Photo by Philippe Perusseau/Shutterstock)

女子サッカーW杯フランス大会でイングランドとの準決勝を控えた米国代表チーム。現地時間25日、主将のミーガン・ラピノーがインタビューに応じ、優勝したらホワイトハウスに招待されたらうれしいかと問われ、たじろぎもせず「ふん」と鼻で笑った。「ホワイトハウスになんか行くもんですか」と。

翌日、トランプ大統領はTwitterで返礼した。「ミーガンは口を動かす前にまず勝つべきだな! 仕事を終わらせてからだ!」。そのあと彼女抜きでチームをホワイトハウスに招待するという内容を投稿した。「ミーガンもチームもまだ招待していないが、勝っても負けてもチームは招待するとしよう。ミーガンは決して国やホワイトハウス、国旗を侮辱するべきではない」

ラピノーはこれまでも選手としての知名度を活用して、LGBTQやマイノリティの権利など、自らが信じる様々な問題を支援してきた。彼女とチームメイトは自分たちのフィールドの中で奮闘しながら、性平等のために戦い、他の女性たちを支援してきた。とくにラピノーは、アメリカ人が国に敬意を払うことと、第45代大統領を支援することとを明確に区別していることを国際社会に示してきた。

ラピノーとトランプ大統領との確執は2016年にさかのぼる。白人選手で初めて国歌斉唱で跪くのを拒否し、マイノリティに対する警官の暴行に抗議したアメフト選手コリン・キャパニックへの指示を表明した。トランプ大統領が抗議したNFL選手らを「我が国の伝統に対する非礼」だとして解雇すると息巻いた後、ラピノーはBBCのインタビューでこう語った。「彼のコメントは不愉快です。少なくとも、彼らはアメリカ人なんですよ。まったく不適切です。大統領らしからぬ、みっともない発言です」

現在、彼女は自らを「歩く抗議活動」と呼んでいる。ひとつには、彼女とチームメイトがアメリカ代表のユニフォームを着ていながら、アメリカサッカー連盟を「組織ぐるみの性差別」で訴えているからだ。給与体系、試合会場や頻度、練習内容、渡航手段、選手たちが受ける医療ケアや指導に関し、男女で差があるという。ニューヨーク・タイムズ紙に対しラピノーはこう語った。「私たちは常に……チームとして、チームのために立ち上がり、チームにふさわしいと思う結果を得られるよう、戦っています。試合を終えるたびに、前よりもいい環境になるようにと頑張っているのです」

ラピノーはまた、スポーツ界のLGBTQ界を代表する著名人でもある。2012年、選手生命の真っただ中でカミングアウトした。「世間は今、私のような選手が古き良きアメリカのためにサッカーをプレイするのを求めている――必要としているのです」と、当時Out誌に語っている。以来、教育現場におけるLGBTQを支援する団体GLSENのために、同性愛に差別的な言葉遣いに関する動画を作成したり、LGBTQの子供たちが安心してサッカーができるようにという活動に参加して、コーチ育成教材を提供するなど、様々な活動を行っている。

一方、アメリカ女子代表チームはここ何十年も女子サッカー界を席捲している。1972年に教育改正法第9編が可決されて以来、女子スポーツが飛躍的に増えたことが主な要因だ――この点では、他国がいまだ根強い性の不平等に苦しむ中、アメリカは恵まれている。女子代表チームはワールドカップを3度制し(男子チームは優勝ゼロ)、今大会ではタイ戦で13ゴールを決め、メディアからは「喜びすぎ」と叩かれはしたものの、女子サッカーW杯史上最多得点を記録した。

Translated by Akiko Kato

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