ポール・スタンレー、KISS最後の日々とファイナルツアーの展望を語り尽くす

2002年撮影のポール・スタンレー(Photo by Kevin Winter/ImageDirect)

いよいよ「最後の来日ツアー」の詳細をアナウンスしたKISS。今回は昨年9月、ポール・スタンレーが自身の歌声、ファイナルツアーの展望、さらにKISS終了後の未来にも言及した“今こそ読むべき”インタビューをお届けする。

KISSがエンド・オブ・ザ・ロード・ツアーを発表した直後、フロントマンのポール・スタンレーはローリングストーン誌のポッドキャスト「Rolling Stone Music Now」に登場して、詳細なインタビューを行った。その中で彼はKISSがツアーから引退する理由など、さまざまな質問に丁寧に答えてくれた。そこでのスタンレーの発言を編集して要約し、文章化したのが下記の記事だ。



―KISSと同じように、同世代アクトの多くが何かしらの形で引退を表明していることに気づいていると思いますが。

多くの人々、バンド、パフォーマーが引退を発表しているのは偶然ではない。アイコン的な存在には年齢も時間も関係ないと信じたい気持ちもわかるが、現実はそうじゃないと時の流れが証明している。俺たちのようなバンドの場合……まあ、俺たちのようなバンドは他にいないがね。総量15〜20キロの衣装と楽器を身に付けてステージを駆け回るバンドなんて他にいないだろう。とにかく、俺の場合、ステージで歌いながら飛び跳ねるのはなんとかなる。ペルシャ絨毯の上に置かれたスツールに座ってマーティン・ギターを弾くってことなら、うん、永遠に続けられるよ。でも、それじゃあKISSじゃない。俺と同い歳で現役でプレイしている野球選手も、フットボール選手も、アスリートもいないだろう? つまり、俺たちはステージに立って自分たちを100%見せて、このバンドのすべてを、俺たちがやってきた事柄すべてを祝いたいのさ。もちろん、ほろ苦さを感じるけど、これが正しいやり方だと確信しているんだよ。

―以前在籍していたメンバーが何らかの形でツアーに参加する可能性はありますか?

それは明言できない。これはKISSというバンドのセレブレーションであって、特定のラインナップやメンバーのものじゃないのさ。特別なルールを決めるつもりもないが、大事なのはそういうことじゃないんだよ。俺たちはKISSとしての誇りを持って登場する。数カ月前にポルトガルとスペインに行って、2〜5万人の会場で演奏した。そこで、俺たちは大得意になって、堂々とパフォーマンスしたんだ。それと同じことを、これまで一度もやったことのない規模でこれから行うわけだ。今回のツアーを見てしまうと過去のKISSのツアーがちゃちに見えるかもな。

―ローリング・ストーンズは最近のツアーで毎回ビル・ワイマンとミック・テイラーをステージに呼び込んで2曲くらい演奏していますが、これと類似したシナリオは排除すると?

いや、そういう意味じゃなくて……隠したいわけじゃないんだよ。ただ、下手なことを言ってミスリードしたくない。本当に、現時点ではそういう事柄にそれほど意識を向けていないし、俺たちが今考えているのは、どんなステージにするか、どんなライブにするかで、実際に今はセットリストをあれこれ話し合っている最中なんだ。


2018年9月26日、ネバダ州ラスベガスにてPUMAコレクションのローンチイベントに出席したKISSのポール・スタンレー。(Photo by Denise Truscello/Getty Images for PUMA)

―これまでライブでやらなかった楽曲もセットリストに加えるつもりですか?

それはいつも興味深いと思う質問だよ。ほら、熱狂的なファンは「レアな曲を演奏しないのか?」と言うけど、ほとんどの観客が聞きたいのは彼らのよく知っている楽曲だ。いつも言っているけど、レアなものにはレアたる理由がある。つまり、それほど良くないってこと。良いものだったらレアになるわけがない。確かにツアー中10公演に来るような熱心なファンがそう思うのは理解できるが、大抵の観客は何年間に一度観に来るわけで、彼らが聞きたいのは大衆に受けた楽曲だ。つまり、クラシックな楽曲ということ。だから俺たちは「デトロイト・ロック・シティ」「ラヴ・ガン」「狂気の叫び」「ロックンロール・オールナイト」「ファイヤーハウス」「ブラック・ダイヤモンド」を披露する。

これは断言できるが……ベテランバンドのライブビデオを見るとする。そのときに音を消して見てみるといい。するとバンドが新曲を演奏した途端にわかるから。観客が一斉に着席するんだよ。自分のライブで大勢の観客が知らない曲を聞いて我慢するなんて、俺は嫌だ。それに、ライブの雰囲気も壊しかねない。だって、みんな、「それ、なんだ?」ってなるだろう?

―現時点でKISSは、アルバム制作からも卒業ということですか?

ある時点で、今やることが過去に自分たちがやったことと同じレベルに達することはないと気づいた。だって古い曲はリスナーの人生とリンクしているわけだし、自分の過去の思い出のスナップショットで、時間の経過とともに存在感が増すわけだよ。確かにライブで新曲を演奏したことはあるし、その曲だって昔の楽曲と同じくらい良い曲だと俺は思う。ただ、例えば「Modern Day Delilah」を聞いた観客は「うん、いい曲だ。じゃ、次は『ラヴ・ガン』をよろしく」とか言うわけだ。俺はその気持ちが理解できる。でも面白いのは、「Psycho Circus」なんて今では20年くらい前の曲だから、もうクラシック曲扱いだ。こういうことは一朝一夕でできることじゃないんだよ。どんな理由であれ、時が経るにつれて風格の増した曲というのは、リリース当初にはなかった重みと深みが加わる。その点で、うん、悩ましいと言えるね。

Translated by Miki Nakayama

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE