高橋:ウクレレにディストーションをかけて弾いたりしていましたからね。以前、清志郎さんが僕に「ローランド・カークっていうミュージシャンがいるんだけど(東芝EMIから)出てるからサンプルCDもらってきてよ」って言われて、ジャズの担当者のところにもらいに行ったら、「さすが清志郎さん、ローランド・カークのCDを欲しいなんて言ってくれたのは清志郎さんだけだよ」って言われて。それで、逆にコメントをもらってきてくれと頼まれたんです。それでどんなミュージシャンなのか知らなかったので映像を見せてもらったら、サックスを5本ぐらい加えて全部吹くんですよ。ローランド・カークの作品に『溢れ出る涙』(The Inflated Tear)という作品があって、RCの「あふれる熱い涙」のタイトルはここからの引用だと思います。もちろん、音楽が好きなんでしょうけど、少なからずあの吹き方にも惹かれていたと思います。
そういうアバンギャルドなアーティストも好きだったと思います。79年~80年頃のインタビューで、好きなバンドはジェームス・チャンス・アンド・ザ・コントーションズって答えてるんです。ノー・ウェイヴ。フリクションのレックさんたちが当時海外でノー・ウェイヴの真ん中にいて、日本に帰ってきてからS-KENさんのコミュニティの中で紹介した。あんまり日本のオーバーグランドに出てきてなかった。そんなときに清志郎さんがジェームス・チャンスっていうから、何者かなってレコード屋に行くんですけど、もちろん置いてなくて、新宿のマニアックなレコード屋に行って買った。それを聴いて「キモちE」の真ん中でグチャグチャになるところとか、「ぼくはタオル」のアバンギャルドさとか、全部そういうところからの影響だってわかりました。
岡本:へえ~! それは知らなかったです。
高橋:だから、ピアノとギターだけの弾き語りだけで聴かせるというのは、自身の遺伝子が許さなかったんじゃないですかね(笑)。
岡本:もちろん、ギターの弾き語りだけでも十分魅力的ですけども。
高橋:アコギの弾き語りだったとしても、最後はディストーションをかけてソロを弾いたりしてました。伴奏もないのにソロを弾くという。それまでのライブの流れをぶち壊すというか(笑)。そういうライブだから、終わった後の感想が「良い曲ですね、詞が良いですね」みたいにはならないんです(笑)。 清志郎最高! だけが残る。理想的なロックのライブで、世界最高のエンターティナーだと思います。
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『I LIKE YOU 忌野清志郎』
Rolling Stone Japan 編集部