ローリングストーンズから影響を受けた日本のバンドと比較する忌野清志郎の特異性

忌野清志郎の広告担当を務めた高橋Rock Me Baby(左)と『I LIKE YOU 忌野清志郎』の編集担当の岡本貴之

 

岡本:その、カルチャーの取り入れ方というのは、具体的に言うとどういうことですか。

高橋:音楽的な側面だけじゃなくて、演出的なものだったりとか、歌詞とか、存在そのものが、ポップスターでもあるんだけど、メッセンジャーでもあって。文化人からも支持されて、アンダーグランドの人たちからも支持されるというスタンス。例えば、当時で言うとパンクスたちはみんなメジャーなロックバンドが嫌いと言ってましたけど、清志郎さんだけは別格でした。芸能界でも清志郎ファンが多くいます。

岡本:「元気が出るテレビ」とか「オレたちひょうきん族」とか、たくさんバラエティ番組にも出てましたもんね。

高橋:そうですよね。娯楽的要素を意図的に、絶妙に取り入れていた成果だと思います。でもそれだけではなく、街のおしゃれな若い子たちに人気のかっこいい洋服屋さんが支持していたり、大貫憲章さんの「ロンドンナイト」で曲がよくかかっていたり。そういうカルチャーも巻き込んでいたミュージシャンって、今も含めてなかなかいないと思います。

岡本:糸井重里さんや吉本隆明さんといった言葉の人からも支持されていました。

高橋:一方で、当時の『平凡』や『明星』の表紙になったりもしたんですよ。

岡本:アイドル雑誌ですよね。

高橋:画期的ですよね。その当時ですでに30歳過ぎてますからね(笑)。テレビ番組にもたくさん出ていました。『夜のヒットスタジオ』に出演したときに、井上順さんが「日本のローリング・ストーンズと呼ばれているんです」と紹介したんです。『トップテン』に坂本龍一さんと一緒に「い・け・な・いルージュマジック」で出たときは、司会の徳光和夫さんが「今日は娘に初めて尊敬されました。サインをもらってきてくれと言われました」と司会をしながら喜んでました。そういう感じだったんですよね。

岡本:お茶の間にも登場する人で、アンダーグランドな世界でも評価される人はなかなかいない気がします。

高橋:いないですよね。あと、当時の最先端のシーンの方々からも評価も高く、いとうせいこうさんがアルバムを作るときにゲストで清志郎さんを呼んだりとか、原宿「ピテカントロプス・エレクトス」みたいなニューウェーブのクラブでも、清志郎さんの曲だけはかかっていたりしていました。そういうところが、山口さんがおっしゃっているように、カルチャーの取り入れ方が絶妙だったということを証明しています。

岡本:そういえば、清志郎さんがトーク番組「Ryu’s Bar 気ままにいい夜」に出たときに、番組開始前の煽りで「次は僕が喋りまくりますよ~!」みたいに言ってたのに、番組が始まったら全く喋らなくてハラハラしました。あのときって、高橋さんは宣伝担当で関わっていたんですか。

 

高橋:僕は宣伝担当者として収録にいました。僕はあの時期、毎日いっしょにいたので、そんなに喋らなかった印象はなかったです。「ビートルズとストーンズとどっちが好きですか?」という問いに、清志郎さんは「ビートルズ」って答えました。そこでストーンズという答えがくると思って、その後の広がりを期待していたのですが(笑)。

岡本:ははははは(笑)。

高橋:それで、「ああ、そうですか……」で終わっちゃったという。

岡本:もう1つ覚えていることで、「海外で活動するつもりはないんですか」みたいなことを訊かれて、「ないです。日本語でしか物を考えていないから」と言っていたと思うんですよ。矢沢さんみたいに、キャロルを解散してソロになってから海外へ目を向ける人もいるわけじゃないですか? 清志郎さんは海外レコーディングは度々していますけど、海外で本格的に活動してみようというつもりは全くなかったんでしょうか。

高橋:そういうことは、どうでもよかったんじゃないですかね。海外も日本も同じに考えていたと思います。そういう意味だと、今の若いアーティストたちと同じかもしれないですね。海外のアーティストだからいい、とか、海外進出は凄いとか、全然思っていなくて、自分たちの音楽をやることだけにしか興味がなかったのだと思います。日本語をリズムに乗せたフロンティアのアーティストの方々は、自分のスタイルを変えないで、世界中のどこでも活動していくという考えだったと思います。アティテュードや作品に影響を受けることがあっても、海外だから英語で歌うとか海外のサウンドに近づけるとか、そういうことはどうでもいいことだったのだと思います。 

Rolling Stone Japan 編集部

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