HYDEが語る「残された時間」と「最後の挑戦」



実数は大きいからこその可能性

ー日本のチャートではまだそういう現象は見られませんが、海外ではチャート上位にロックと呼ばれるジャンルの楽曲が入ることが少なくなっています。2000年代に入ってからも数千万枚売り上げるようなロック・アルバムは存在しましたが、ここ数年そういった元気さが海外のチャートからは伝わってこない。その一方で、ロックフェスをやれば数万人というお客さんが集まる事実もあるわけで。そういった海外の風潮は、HYDEさんにはどう映りますか?

HYDE  確かにシーン全体で見たときには全然ダメですよね。でも、アメリカは国がデカイから、何百分の1であってもその実数はデカイわけですよ。フェスにしても、メタルフェスだけでどれだけあるんだ?と思いますし(笑)。結局、それだけ好きな人がいるんだなとは思いますよ。僕が今海外でやろうとしているのも、そういうところが理由です。もちろん、メインのフィールドでは勝てるとは思ってないし、だからこそロックのコア層に届けたいんです。

ーそのコア層も、アメリカとヨーロッパとではちょっとずつ嗜好が異なるんじゃないかと思います。HYDEさんはそのへんも肌感覚で、我々以上に感じてるんじゃないでしょうか?

HYDE ヨーロッパの中でもイギリスは英語圏なのでまた特殊だと思うんですけど、全体的にアメリカよりは受け入れ態勢があるんじゃないかな。ヨーロッパは言語が英語じゃないところもすごくいいですよね、こちらの気持ちをわかってくれるというか。逆に、アメリカは国が広いぶんバンドもたくさんいるし、一番アウェイを感じます。

ーそのアウェイ感というのは、サウンドに対してなんでしょうか? それとも国籍に対して?

HYDE 両方じゃないですかね。日本人が作るサウンドに対して興味がないという。だからこそ、一番高い壁だと思ってます。

ー状況も環境もまったく異なるので一概に比べることはできないかもしれませんが、HYDEさんが90年代に音楽活動を始めた頃と比べても、今は厳しいと感じるわけですか?

HYDE  僕自身、90年代は特に海外に向けて活動していたわけでもなかったので、あまりそこにはリアリティはなかったんですよ。もちろん鎖国していたわけではないけど、L’Arc~en~Cielの場合はアニメファンなのかヴィジュアル系ファンなのかわからないけど、そういう面が大きかったので成功してマディソン・スクエア・ガーデンまで行けたと思うんです。それは素晴らしいし凄いことだと思うんだけど、かといってそれが向こうの一般的なロックファンが聴いて好きなものかというと、そこはまた別の話だし。でも、僕がやりたいのは、現地の普通のロックファンにも好きになってもらうこと。だからこそ、すごくハードルが高いなと思ってるんです。まあでも、可能性はゼロではないと思ってるし、ヨーロッパで受け入れられている日本のアーティストぐらいの感じをアメリカでも目指したいですね。

ーなるほど。それこそVAMPSでは『DOWNLOAD FESTIVAL』に出演したりと、海外展開をかなり意識的に続けてきましたよね。そういったVAMPSでの活動が今、アドバンテージになっていることもあるんでしょうか?

HYDE もちろん。あれがなかったら、これからの活動が何年も前に逆戻りになるだろうし。ただ、海外でも活動しているほかの日本のアーティストがアプローチしているのを見ると、ある程度地位がわかりますよね。そこで日本人がやったらどうなるのかが参考になるから、すごく大きいし。これが10年前はわからなかったぶん、今はもうちょっとリアルに見えてきたかな。彼らがこうやっているんだから僕には無理だな、とかいろいろ参考にもなります。もちろん、VAMPSでの活動がなかったらさらに想像がつかなかっただろうし。あの経験があったから、アメリカでどうやればいいかとか、僕なりにいろいろ仕組みがわかったし、今は海外のスタッフにも確信を持って意見を言える。以前は言われるがままにやることもあったけど、今はそれじゃダメ。ここからこういう道で行かないとダメって、僕の考えが正しいと思えるようになりました。

ーある種そういうゲームをサヴァイヴしていく力がないと、海外で成功することは難しいでしょうし、その基盤はVAMPSでの経験が活きていると。

HYDE まさにそうですね。

ーまた、海外で活動するにあたって、お客さんにしても業界の人にしてもコミュニケーション力が問われる場面も多いと思います。

HYDE そういいながら僕、英語が苦手なので、次のツアーに向けてもうちょっと喋れるように今勉強しているところです(笑)。そもそも、基本的にあんまり社交的ではないんですよ。日本語も話さないのに英語でどうやってコミュニケーションするんだ?っていう疑問もあるんですけど(笑)。でも、うちのバンドメンバーは英語が話せる人が多いので、そこは任せようかな(笑)。

ーでは、レコーディングなど制作のときに海外のプロデューサーとやりとりをするときは?

HYDE 日本語と英語、両方できるスタッフが多いので間に入ってもらってます。なので、そこも困らないですね。

ー実際、向こうのスタッフとのクリエイティヴなやり取りは面白いですか?

HYDE 日本とは全然違うし、本当に面白いですよ。プロデューサーしかりエンジニアしかり、一人ひとり個性の塊ですから。あるエンジニアはギターとベースのレコーディングのとき、全部の音を出さずに録っている単音だけを聴くんですよ。普通、いろんな音を鳴らしながらベースなりギターなりを録るじゃないですか。でもそのエンジニアはベースの音、ギターの音しか出さない。そういう人もいれば、びっくりするぐらいモニターの音を小さくしてミックスする人もいたり。その人曰く「デカイ音がカッコいいのは当たり前、いかに小さい音でカッコいい音を作るか」だと。でも、そういうやり方をするのはその人だけなんですよね。僕のヴォーカル録りでも、例えばワンセンテンスだけをずっとループさせて僕が何十回も歌ったり。それも初めての経験だったし、いろいろなやり方があって本当に面白い。

ーとなるとアーティストとして今、新鮮な発見も多いのでは?

HYDE もちろん。日本人はどうしても外(海外)にあまり出ないから、もっと出たらやり方も変わるんだろうね。

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