HYDEが語る「残された時間」と「最後の挑戦」

単純に僕が好きかどうかだけ

ーこのニューアルバムが海外でどう評価されるのか含めて楽しみです。と同時に、国内でも久しぶりにHYDEさんのソロ名義でのアルバムということで注目している方々もいると思います。改めて、VAMPSの活動休止が決まってから、ソロアーティストとして活動しようと決めたとき、やりたいことや形に残したいものがどの程度イメージできていましたか?

HYDE ぶっちゃけ、何もイメージできていなかったです。ただ、VAMPSでやってきたことは自分にとって、それ以前のソロ活動とあまり変わらなかったんです。僕にとってはただやりたいことをやっていたつもりだったので、それを止めるんじゃなくて、ソロになっても引き継いでいこうと。VAMPSで「ああ、ここはこうすればいいんだ」と気づいたことをソロでは続けてやろうとは思っていました。

ー実際、VAMPSを結成したときもソロ活動の延長とおっしゃっていましたものね。では、L’Arc~en~Cielという大きなバンドがありつつ、その外で何か創作活動をする一環としてソロやVAMPSがあると。

HYDE そうそう。そうですね。

ーでは、今度のソロアルバムではVAMPSでの最新作にあたる『UNDERWORLD』(2017年)からの流れを汲みつつ、その延長線上にある世界観が描かれていると。

HYDE そうなりますね。『UNDERWORLD』も海外のプロデューサーと一緒にがっつり作ったけど、サウンドがそれ以前とは全然違ったので。アメリカのバンドみたいなカッコいい音をしていたし、その部分は残したいですよね。そこから、さらに楽曲を自由にさせて作りたいなと。

ーそこで、さっきおっしゃったように楽曲ごとにいろんなソングライターが複数参加したり、それこそアルバムでは1曲ごとにプロデューサーが変えていったと。この制作手法も海外ではもはや当たり前になっていますが、日本ではまだまだ馴染みが薄いものですよね。

HYDE それこそマイケル・ジャクソンなんて、1枚のアルバムでいろんな人が作曲していますよね。それでもちゃんとマイケルのサウンドになっているし、マイケルという強力なプロデューサーが中心にいるから、彼ならではのトータルで美しい芸術が完成すると。今は僕もそういう感性でやりたいなと思っているんです。

ー今作に参加したプロデューサーの人選はどのように決めたんですか?

HYDE カッコいい音を作る人というのがまず基本で、そこからどの曲を作ったかをチェックして。それこそデモ音源で「こういうのをやったらどう?」とか作ってくるプロデューサーもいるので、そんな中からいい人を選びました。

ーそれは常にアンテナを張っていないと気づかないことも多いですよね。

HYDE そうですね。ただ、僕がいいと思った人ってすでに、CrossfaithとかONE OK ROCKとか日本のバンドと仕事していたりするんですよ。ああ、僕が一番じゃないんだって(笑)。だから、だいたいみんな探しているところは一緒なんでしょうね。

ー最新でカッコいいものを作れる人となると、みんなそこにたどり着くと。

HYDE みたいです。プロフィールを見るたびに「ああ、もうやってるわ」って思うことが多かったし(笑)。

ー1曲1曲を聴く限りでは各プロデューサーのカラーが強く表れたサウンドになっていますが、アルバムとしてまとめるときにはHYDEさんがトータルバランスを見るわけで、最終的には一貫性のあるものになるかと思います。そのトータル性は、1曲1曲を作る際には意識しているんでしょうか?

HYDE そこは単純に僕が好きかどうかだけです。それが一番大きいかな。もちろん、ジャンル的には微妙にばらけた雰囲気はあるかもしれないけど、単に僕が好きかどうか、そこでジャッジしてます。あとは、自分が目指している方向としてある程度ハードじゃないとダメだし。そういうところかな。

ー完成したものを全部通して聴いたとき、どう感じるのか今から楽しみです。

HYDE どうしても「このプロデューサー、やたらとドラムの音がデカイんだよな」というのが何曲かあるんですけどね(笑)。

ーよく海外のプロデューサーはリズムを強調する方が多いと聞きますが。

HYDE そうなんです。「MAD QUALIA」は日本でミックスしたんですけど、海外でミックスした他の曲と落差があったらいけないから「ドラムをちょっと大きめにしておいて」と伝えていて。そうしてもらったにも関わらず、アメリカでミックスした音源と聴き比べたらやっぱりまだ小さかったんですよ。いかに日本とリズムの解釈が違うかを、そこで思い知りました。

ー最近はK-POPもそうですけど、洋楽における低音の鳴り方にはそれ以前と違ったものがありますし。

HYDE そうですね。基本的に国民性の違いも大きいと思うんですよ。例えば、日本ではそこまでやろうとしないとか、これで十分だから必要だと思わないんじゃないですかね。ライブでも日本人が作るとちょっと腰高なサウンドになるし、海外のエンジニアがライブでPAをやると腰がドーンと落ちるんです。だから、欲しいところが違うんでしょうね。極端な話、日本のそういう音を聴くとただ音がデカイだけで、「耳が痛い」という声も結構多いし。

ー以前、ある国内アーティストが海外でツアーをしたときのエンジニアを日本に連れてきたことがあって。同じ会場で日本のエンジニアとその海外のエンジニアがPAを担当したライブを観比べたときに、音の鳴りがまったく違ったんです。海外のエンジニアが担当した公演のほうは音が大きいのに、まったく不快さがなかったんですよ。

HYDE そうなんですよね。でも、それは本当にあると思いますよ。

ー日本とは違ってヘヴィな音楽に対して歴史が長いからこそ定着している、そういう違いがあるんでしょうか。

HYDE  たぶんあるんじゃないかな。アメリカではそれが当たり前だから、みんなそれを普通にやっているわけで。日本も一緒で、それを当たり前にやっているから、海外とのズレが生じるんでしょうね。でも、そこは僕ら日本人のアーティストからすれば狙い目ですよ。だって、海外のエンジニアを日本に連れてくれば、ほかのアーティストと違うサウンドを示すことができるわけですし。面白いから、やれる人はやったほうがいいですよ。


Photo by Tim Gallo for Rolling Stone Japan

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