HYDEが語る「残された時間」と「最後の挑戦」

モノ作りが好きだからこそのこだわり

ーこれまでのシングル5枚と、昨年のツアーで披露された新曲を聴く限りで来たるニューアルバムの雰囲気はなんとなく想像できるかと思いますが、現時点でアルバムはどの程度完成しているんですか?(※取材時は2019年3月)

HYDE もう1曲追加して、その曲をレコーディングすれば完成です。

ーではツアーに入る前には?

HYDE リリースします。アメリカツアーの前に配信を始めて、日本のツアーの前にフィジカル発売を予定しています。だから、今はバタバタしていて慌ただしいんです(笑)。

ーデジタルで先行リリースする手法は、「WHO’S GONNA SAVE US」や「AFTER LIGHT」などのシングルでも実施してきましたが。

HYDE 完全にデジタルへ移行する時代は必ず来るだろうから、今のうちにファンを慣れさせておきたいなと誰かが言ってましたが(笑)。アメリカだとレコード屋なんて、ほぼ無いですもんね。楽器屋さんに5枚ぐらい、メタリカとかのベスト盤が置いてあるぐらいで。

ーとなると、フィジカルってファンの人にとっての大切なアイテムという役割が大きなものになりますよね。例えば限定盤に映像を付けたりコンセプトブックを同梱したりと、そこに対する作り込みのこだわりはどの程度ありますか?

HYDE そこは昔から変わらないですね。僕も日本人なのでフィジカルの良さをわかっているし、逆にデジタルの良さもわかってますし。最近はパソコンにもCDドライブが付いてないじゃないですか。それを読み込むための機材を出してくるのも面倒くさいし、フィジカルで持っていても「もういいや」と思ってデジタルでダウンロードしてしまいますからね(笑)。だけど、何かを持ちたいという所有欲が満たされる感覚も僕にはすごくわかります。好きなアーティストのアイテムを所持することが喜びであって、それは別に聴かなくてもいいんですよね。それに僕はモノ作りが大好きなので、需要が減ってもフィジカルはこだわりたいというのがあって。複数仕様とか商業っぽいとは思うんですけど、いろんなものを作りたいんですよ。ある人はアート的なものを観たかったり、また別の人は映像を観たかったり、どこかにファンに刺さるものがあるんじゃないかと思うし。結局、そういうものを作るのが好きなんですよね。

ージャケットにしてもそうですものね。今はパソコン上でのアイコンといった程度に小さくなってしまったために、細部までこだわってもそれが伝わりにくいですし。

HYDE うんうん。だからこそ、小さくても目立ってフィジカルでも素敵なものを目指してます。

ーサウンド面についてもお聞きしたいんですが、シングル曲など新曲を聴いた限りでは今の日本のラウドロックシーンにも通ずるテイストが多く含まれているかと思います。HYDEさんには今のそういったシーンはどのように映りますか?

HYDE 実はあまり詳しくないんですよね。その界隈の人たちとも接点がほとんどないし、友達もいないし。もちろんCrossfaithとかSiM、coldrainとかどういうバンドは知っているし、どのぐらいのパワーがあるかはなんとなく把握はしていますけど意見を言えるほどシーンを理解してないですね。海外でどう見られるかは多少意識してますが。正直言うと、日本での自分自身のマーケティングはあんまり良くないと思っていて。もっと主流にしないと日本では売れないだろうなとは思っているんですけど、なるべく日本人好みの曲でありながらアメリカでも伝わる方向にはしたいんですけど、常にそれをやっているとちょっと遠回りかなと思ってしまうんです。ただ、「MAD QUALIA」は日本人も好きだろうし、海外の人も悪くないと思う良いバランスだと思いますよ。

ーとなると、アルバムにおけるそのバランスはどうなっているんですか?

HYDE もう少しアメリカンな作品になっていると思います(笑)。シングルはどちらかというと日本人も好きそうな絶妙なラインを狙っているんですけど、アルバムのほかの曲はそこまで考えていないので。プロデューサーもアメリカ人なので、もう少しアメリカナイズされているかな。

ーでは、歌詞はどうですか? シングル5枚では全編英語詞の楽曲もあれば、日本語バージョンも用意されています。アルバムにおいては、海外でリリースするものはオール英語詞とか、日本盤は日本語詞を混ぜたりとか、その振り分けは?

HYDE そこもちょっとだけ。「ZIPANG」と「MAD QUARIA」だけかな、ジャパニーズバージョンがあるのは。それ以外は基本的には英語詞、もしくはわざと日本語を入れているところがあったり、そのどちらかですね。

ーでは、特に海外だからといって全部英語詞にするというわけでもなく?

HYDE そう。わざと日本語を入れたりしています。そのほうがなんとなく面白いかなと思って。韓国のアーティストは韓国語をうまく取り入れていて、そこがキャッチーだったりするので、日本人としてもそういう部分を少し出したいなと思ってます。


Photo by Tim Gallo for Rolling Stone Japan

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