─さて、その『ヘルプ・アス・ストレンジャー』は前作『コンソーラーズ・オブ・ザ・ロンリー』から11年ぶり、そして、今回のツアーが8年ぶりになるのですが、なぜ、そんなに時間が空いてしまったのでしょうか?ジャック:みんなに聞かれるんだけど、まだいい答えが見つからなくて(笑)。
パトリック:時間が経つのが早いんだ(笑)。
ジャック:それが一番手っ取り早い答えだ。それに、それぞれ別の活動で忙しかったしね。パトリックはアフガン・ウィッグスがあって、ブレンダンもソロ活動があって、JL(ジャック・ローレンス)はカーニバルで働くのが好きで(笑)、僕自身も、この10年、サード・マン・レコードを軌道に乗せるため本当に忙しかった。ついこの間、10周年を祝ったばかりなんだ。それを考えただけでも、うわ、もう10年か。本当に忙しかったんだなって感慨深いものがある。だから、これだけ時間がかかってもしかたなかったんだ。
ブレンダン:お互いのことが好きだし、一緒にプレイするのも大好きだとは思う。でも、他にもやりたいことがあるんだ。毎晩、ブロッコリーばかり食べるわけにはいかないだろ? 変化がなきゃ。豆やニンジンを食べたくなる時だってある。
ジャック:僕たちはラッキーでもあると思う。いろいろ違うことができるというのは、ミュージシャンとして非常に恵まれた立場にいるということだから。僕がもし一生、ホワイト・ストライプスしかできなかったとしたら死んでしまうかもしれない。1つのバンドを続けるために、あらゆる手を尽くしてがんばらないといけないというのは、相当なプレッシャーだ。そういうプレッシャーは創作活動に悪影響を及ぼすと思う。だから、今の立場は本当に恵まれていると感じているんだ。それがやれているアーティストって、そんなにいないだろ。たとえばニール・ヤングぐらいはクレイジー・ホースとやったり、他のプロジェクトをやったりしているけど。
ジャック・ローレンス:クロスビー・スティルス&ナッシュとかね。
ジャック:そうそう。彼ぐらいだろ? だから、ラカンターズのメンバー全員にとって、複数のプロジェクトに関わることができるのはありがたいことだと思うんだ。
─でも、こうしてまた集まるということは、この4人でなきゃできないことがあるわけですよね?ジャック:もちろん。
パトリック:ヴォーカルが2人いるからね。
ジャック:それにソングライターも2人いるから、ソロや他のバンドとは全然違う音楽との向き合い方ができる。新作の「Shine The Light On Me」という曲はこの前のソロ・アルバム(
『ボーディング・ハウス・リーチ』)に入れようと思ってたんだけど、ラカンターズっぽいから取っておくことにしたんだ。そしたらちょうどラカンターズでアルバムを作ることになったから、このメンバーで演奏することができた。最初の直感は当たっていて、最高の仕上がりになったよ。
─今回の来日公演からも、このインタビューの雰囲気からも4人の仲が良くて、関係がすごくいいことがわかるから、敢えて聞きますが、お互いに“こいつムカつくな”って思う時なんかもあるんですか?(笑)パトリック:ハハハ。どうだろう?(と大袈裟にウインクする)。
ブレンダン:何の話だい?(笑)
ジャック:年齢を重ねるにつれ、前より細かいことが気にならなくなったってことは言えるかもね。昔だったらすごく気になったことを傍観できるようになったのが自分でもわかる。気にならなくなると言うか、気にするだけムダだって思うようになったんだ。
パトリック:普通に人として年齢を重ねれば分別がつくしね。
ジャック・ローレンス:アルバムのレコーディングもすごくスムーズに進んだよ。揉めることもなかったし、ケンカもなかったし。もしかしたら数年前までだったらあったかもしれないけど、自己顕示欲もなくなって、バンドとして1つにまとまる術がわかったんじゃないかな。
Photo by Steven Sebring─ところで結局、4人が顔を揃えた直接のきっかけは何だったんですか?ジャック:覚えてたらいいんだけど。
パトリック:2人で先に曲を書き始めたんじゃなかったっけ? 連絡をもらったのは覚えてるよ。
ジャック・ローレンス:みんなが集まれるちょうどいいタイミングだったんだ。ジャックはソロ・ツアーを終えたところで、ブレンダンも一段落してる状態で、アフガン・ウィッグスの活動もきりが良くて、僕もいろいろなバンドとの活動を終えたところだった。元々、このバンドが生まれたきっかけも自然な流れだった。きちんと計画を立てて動くのではなく、なんとなく気づいたら一緒にやっていた、というのは今回も変わらない。
ブレンダン:さっき言っていた「Shine The Light On Me」を聴かせてもらったことが、もしかしたら今回のアルバムに繋がるきっかけだったのかもしれないね。確かジャックが車の中で聴かせてくれたんだ。“ラカンターズっぽくない?”って。その時、自分のほうがうまくやれるって思ったよ(笑)。