Ghost like girlfriendの多彩な音楽的背景と表現欲「そこはゴールじゃない、まだ終わってない」

─意外なリファレンスばかりで驚きました(笑)。テレビバラエティや歌謡曲、特に堂本剛さんの影響は本当に大きいんですね。では、今回リリースされた1stフルアルバム『Version』のテーマを教えてください。

岡林:まずこのタイトルは、幅広い楽曲を取り入れたいという意味での「ヴァージョン」と、もう一つ「ヴァージン・ロード」のヴァージンに語感が近かったことから付けました。本当は最初のミニアルバム『WEAKNESS』につけようと思っていたんです。というのも、本名名義の弾き語りスタイルでデビューして6年経ち、新たな名義で一から再スタートするには相応しいと思ったんですよね。で、今回メジャーデビューという門出でもあったので、これ以降はもう使うタイミングがそうそう訪れないと思ったので使うことにしました(笑)。

─冒頭曲「Last Haze」もまた、これまでにない新境地ともいえる仕上がりですよね。

岡林:実は、本格的にこの曲を作り始めた昨年末が、人生で最も体調を崩していた時で。病院をいくつも回ったり、MRI検査を受けたり、結構シリアスな状態だったんです。アルバムを作るどころか、「もう死ぬかもしれない」って思っていたんですよね。



─え、そんな状態だったのですか。

岡林:でも、よくよく調べてみたところ何も異常はなく……。むしろ人並み以上に健康だと言われるという、コメディみたいなオチを経験して(笑)。それがきっかけとなり、サビで歌っている“明日死んでも良いなんて全て叶うまで無しにしようぜ”というラインが思いついたんです。「人生、終わった」と思ったところからの、「いやまだ続きが全然ある」と気づかされた経験というのが、まさしくGhost like girlfriendとして再スタートする自分にもリンクして。

─なるほど。それでいうと「sands」の歌詞、“スタートをゴールと見間違えて喜んで 出会った何人もが坂を転がりゆく様”というラインも、ある意味では「Last Haze」に通じるところがありますよね。

岡林:そうなんです。例えば「期待の新人」という紹介のされ方ってあると思うんですけど、それも2、3年もすれば「中堅」と呼ばれてしまう。それって「賞味期限」というか、タイムリミットを設けられているのと同じような気がしてしまうんです。

他にも、例えばあるバンドがメジャーデビューを祝ってもらう酒の席で、はしゃぎ過ぎて警察沙汰になり、デビューの話も無くなってしまう話とかを実話として聞いたこともあって。「いや、そこはゴールじゃない。まだ終わってないよ?」っていう。ほんと最近は、いろんな局面でそういうことを感じるんですよね。



─良いことも悪いこともずっと続くわけではなく、死ぬまでは全てが「通過点」でしかないということを、ついつい忘れてしまいがちですよね。

岡林:そうなんです。なので、この「sands」で歌っている内容は、自分自身を律するために言い聞かせていることでもある。これまで積み上げてきたものを、絶対に崩したくないという心配性なところからも来ている曲ですね(笑)。

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