Tempalayが語る「間奏」という概念が生まれた背景、陶酔と響きの探求

新しいものを見つけることは、時間と情熱と身を削る作業

─その「のめりこめ、震えろ。」ですが、岡本太郎にインスパイアされて歌詞を書いたそうですね。

小原:岡本太郎さんって、表ではすごくエネルギッシュでバイタリティあふれるイメージですけど、実際はものすごく怯えていた人だったんじゃないかなと思うんです。「受け入れられようとするな」みたいなことをおっしゃっていましたが、「受け入れられなきゃ意味がない」と思っていたはずなんです。そのために、誰もやっていないことをやっている。シュルレアリスムでもないし、キュビズムでもない、新しいものを見つけることは、それこそ「情熱と時間と身を削る作業」だったのではないかと。

とにかく女をたくさん抱くし(笑)、美味いものをたらふく食って酒を飲みまくる。全て「芸術」のためだと言いますが、非常に孤独な作業だとも思うんですよね。そういうところって、今はなりきれないと思う。みんな生活があるし、世間体もありますからね。太郎さんの時代が本当に羨ましいんですけど、せめて彼の「精神性」くらいは、みんな持っていてもいいんじゃないか?って。もっと芸術に向き合うというか。もっともっと心の部分で反応してくれれば、本来のあるべき芸術がもっとちゃんと必要とされると思うんです。そういう思いで作ったのが「のめりこめ、震えろ」なんですよね。

─そういう自由を大切にする精神性や、世の中にはびこる既成概念への問題提起、世の中への諦観と怒りみたいなものは、本作を貫く大きなテーマだと思いました。

小原:そうですね。しかもそれは、Tempalayというバンドにとって「永遠のテーマ」といえるかも知れないですね。別に、大っぴらに掲げているわけではなくて。自然とそうなっていたというか。世間における、アートへの認知の低さ、そもそも興味すら失っている感じ……なんなら「生きていく上で、必要ないもの」とされているじゃないですか。でも俺自身は必要というか、「芸術を想像することは経済にもつながる」と思っているんです。僕らTempalayが、そう意思表示をすることで、同じように思っているやつらが少しでも前に出やすい環境になればいいなという気持ちもあります。何かしら変化が起こること、状況が変わることって、絶対面白いので。

……て、なんか、真面目に話しちゃいましたけど、とにかく「楽しいんだぜ?」っていうのを示したいです。


Photo by Nariko Nakamura

─活動をしていて、不自由を感じるとかではない?

小原:不自由も感じますけどね。インタビューにしたって、言葉を直されるし。「俺は別にいいんだけどな」ということでも、会社に「ダメ」って言われ……(笑)。ちょっと理解できないところは多々ありますよ。それこそ「のめりこめ、震えろ。」のPVはPERIMETRONがプロデュースを、山田健人(yahyel)が映像監督を担当してるんですが、「音楽業界に宣戦布告するテロル集団」という設定になっているんです。



彼らは活動の中である程度、お客さんや大衆を取り込むんですけど、音楽業界にいる得体の知れない力に一撃で倒されてしまう。そのことのメタファーになっている。どれだけ突き抜けた表現であっても潰されてしまうという、さっきの話に通じるところですね。しかも、その得体の知れない何かの正体が分からないという怖さもある。

─なんとなく忖度で自主規制してしまうとか。

小原:そう。ただ、何度も言うように、そういう世の中に対して何か政治的なメッセージを声高に主張するつもりはないんです。むしろ、そこはすごく無責任でいたい(笑)。自分が書いた歌詞についても、どう解釈されたって構わないし、それこそ表現の自由だと思っています。どの立場だろうが、「これは絶対にこうだ!」と断言するやつって面白くないじゃないですか。

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