トランスジェンダー女性の死が招いた売春「非犯罪化」議論

レイリーン・ポランコの死の真相解明を訴える、トランスジェンダー支援活動家のデモ行進。(Photo by STEPHANIE KEITH/The New York Times)

現地時間7日、27歳のトランスジェンダーの女性レイリーン・ポランコさんが、米ニューヨーク市ライカーズ刑務所内の監房で身動きしていないのが発見された。蘇生措置を試みたものの、午後3時45分に死亡が宣告された。

ポランコさんの死因はまだ公表されていないが、ニューヨーク市検視局のアジャ・ワーシー-デイヴィス広報部長がローリングストーン誌に語ったところでは、身体に外傷を受けた形跡はなく、当局は「他に考えられる死因を特定するべく、さらに薬物検査と検視を行う」という。ポランコさんが不可解な状況で死亡していたことから――今年に入って全米で亡くなった10番目のトランスジェンダーの女性であることも含め――LGBTQの活動家らは一斉に抗議の声を上げ、ビル・デブラシオ市長からの回答とライカーズ島の即時閉鎖を求めている。

ポランコさんの死に関して、さらに痛ましい事実が発覚した。ポランコさんがライカーズ刑務所に収監されたのは、勾引状(裁判所に出頭しない個人に対して発行される令状のこと)に対する500ドルの保釈金を支払わなかったため。そもそもの発端は2017年8月のNY警察のおとり捜査で、ポランコさんはおとり警官に対し、金銭と引き換えにオーラルセックスすることに同意して逮捕された。彼女は売春の微罪と軽度の薬物所持違反で逮捕された。

逮捕の結果、ポランコさんは刑期を務める代わりに、マンハッタンの人身売買調停裁判所(HTIC)に出廷し、カウンセリングを受けることが義務付けられた。売春容疑の逮捕者に対してしばしば科される措置だ。彼女は去る4月にもタクシーの運転手を噛んで再逮捕された。この件だけならライカーズ刑務所行きを免れただろうが、裁判所命令による更生プログラムを受けず、500ドルの保釈金も払わなかったために収監されたようだ。

ローリングストーン誌の取材に対し、ニューヨーク州統一司法府のルシアン・チャルフェン広報部長は次のようにコメントした。「ニューヨーク市刑事裁判所の判事は、レイリーン・ポランコさんの直近の暴力事件逮捕に対して保釈金を言い渡しましたが、その時点で彼女には審理続行中の裁判をいくつも抱えていました。過去の人身売買事件に絡む出廷命令を8回も無視しています。ニューヨーク州では、保釈金は被告人の出廷を確約するために設定されますが、過去の行動から判断するに、彼女にはこれが問題だったようです」

死亡当時、ポランコさんは監視棟に収容されていた。別の囚人と口論を起こしたのが原因で、少なくとも1週間は収容されていたという。月曜日、LGBTQコミュニティの団体Anti-Violence Project主催のデモ行進でポランコさんの遺族が語ったところでは、ポランコさんは癲癇を伴う持病を抱えていたという。

ポランコさんが微罪に対する保釈金の未払いで収監され、しかも監視棟の中で死亡したという事実に、ソーシャルメディア上ではあちこちで怒りの声があがった。アレクサンドリア・オカシイオ・コルテス下院議員をはじめ著名な政治家も彼女の死に怒りを表明した。今週議会に提出されたニューヨーク州全域の売春非犯罪化法案を推進していた団体DecrimNYも、ただちにポランコさんの死に関して声明を発表した。

Translated by Akiko Kato

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