大槻ケンヂが振り返る、筋肉少女帯との30年「ロックを始めたきっかけは長嶋茂雄」

―でも大槻さんの芸風もあいまって、対外的な筋肉少女帯30年の歴史は、虚実ないまぜの“それ”だったりするじゃないですか。格闘家の談話じゃないですけど、だからこそ面白いわけで。

大槻:そうだね。小説を書いたりするような人間だから、ついついサービスで話を広げちゃうんだよね。面白いほうがいいという主義。それはやっぱりね、梶原一騎の『空手バカ一代』や『プロレススーパースター列伝』を読んで育った少年は、そうしてあげたいのよ。だから、いろんなところで筋肉少女帯の30年について語ってるけど、僕の話はあんまり信じないほうがいいです!(一同笑)でももちろん、そこだけは間違えちゃダメってところはちゃんと語るし、もしそこ間違えたときは謝って直すよ。

―『列伝』における「アントニオ猪木(談)」みたいなものだと。

大槻:『列伝』まで行くともうファンタジーだよね(笑)。でも筋少の本当の歴史を知りたい人がいたら、メンバーじゃない第三者の方がいいのかね。そういえば、筋少のベースをやってる内田雄一郎くんが「面白いけどオーケンは盛った話をするから、だったらば全部、小説にすればいいだろう」って言ったことがありましたよ。彼はね、戦史とか読むのが好きだから、史実派なんです。でも彼も一昨年、盛りまくったロックバンドの物語ですごく感動していたから、たぶん。ロックミュージシャンの話は、かなり盛っていいんです。それが去年、社会的に、それどころか内田くん的に認められたんです。

―まさか……。

大槻:そう、クイーンですよ! 大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』、盛ってばっか!(一同笑) バンドの歴史、映画の内容の根幹に関わる部分すら盛ってるじゃないですか。僕、アレ観て『空手バカ一代』を思い出したんですよ。でもそれをね、みんながよかった、よかったと喜んでるんだから、今後は盛り放題ですよ。クイーンがあんだけ盛ってるのに、なんで俺たちは駄目なんだって話になるもの。あんな出っ歯にしちゃってさぁ……って、そこは本当にそうだったか? こうやって調子に乗ると取材は楽しいね。でもそう! ネットができてから何が残念かというとね、インタビューで調子に乗ってジョークが喋れなくなったことですよ。

―しかもこれ、まさにWEB媒体の記事ですからね(笑)。

大槻:インタビュアーさんや読んでくれる方々を、ジョークで盛り上げる取材というのが僕は好きだったんだけど、今はマジメな話しかできないね。『ボヘミアン・ラプソディ』だって映画だからよかったんだろうし。ただ、大好きな寺山修司先生が好きだった言葉に「実際に起こらなかったことも、歴史のうちである」ってのがあって、10代の僕はものすごく感動しちゃった言葉だけど、これが最近の量子力学における多次元宇宙、パラレルワールドのサイエンスと重なる部分があるんだよね。宇宙ってものは、非常に多次元的な構造になっていて、あなたがいるこの世界だけが本当の世界ではない。わずかにズレた世界に、また微妙にズレた人生を送ってる別のあなたがいる……かもしれないといわれてるわけですよ。だから、もしかすると誰かの盛ってるような話っていうのは、多次元世界の微妙にズレた世界に住んでる彼の話なんじゃないかなと思うのね。

―……なるほど?

大槻:たとえば多次元宇宙には、何千、何億分の一の確率でモテてる大槻ケンヂもいて、そいつがモテてない大槻ケンヂに自慢したくて、ビコビコビコと精神電波でモテを伝えてきてるのではないのかな。いわば異次元イタコですよね。だっておかしいもん、僕の人生。友達もあまりいない、なんかサブカル……当時はサブカルなんて言葉もなかったからアングラなマンガと、誰も観ないような映画ばかり観てた暗~い少年がだよ、たまたまロックバンドを始めてみたら、のちに有名になる人たちが集まってきて、その勢いに乗ってプロデビューしてしまい、いきなり日本武道館公演も果たしてさ。まぁ、そこからは紆余曲折あったけども、こうやってRolling Stoneさんの取材まで受けさせてもらってるご身分になってるなんて、そんなわけないもん。『デビルマン』の飛鳥了じゃないけど、僕の人生は全部まぼろしなんじゃないか? すべてはサイコジェニーが見せた夢まぼろしなんじゃないかって、本当にそう思ったりしますよ。全部、異次元にいる別のオーケンからの自慢テレパシーなんだよこれ。モテ・テレパシー……モテパシーだったのか!! 

ーモ、モテパシー!

大槻:まぁ、現実の僕といえば、やっぱりただの暗~い人間ですから。今もいっぱい作詞してるけど、どうしても根底にはセンチメンタルというか、感傷的な孤独感がある。だからこそ楽しくやろうと思ってるんですけどね。

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