レディオヘッドの長尺リーク未公開音源、聴いておくべき30分

レディオヘッドのコリン・グリーンウッド、フィル・セルウェイ、トム・ヨーク、エド・オブライエン、ジョニー・グリーンウッド(Roger Sargent/Shutterstock)


「(Tomorrow Night in Paris)」(非公式タイトル、MD127の最終曲)

過去にリリースされたレディオヘッドの曲の未完成版以外で、今回のリークで最もワクワクさせてくるのはヨークがMDプレーヤーに1人で録音した数々のデモである。その大半はレディオヘッドでもヨークのソロ作品としても使われてはいない。

レディオヘッドは常に自分たちの音楽に対して厳しい監督であり続けてきた。だからこそ、このように無防備で完璧でないヨークの歌と演奏を聞くことができることは魅力的であり、衝撃的であり、天地がひっくり返るようなことなのである。ある意味、このMD音源は、大衆受けを狙っているわけじゃないというカート・コバーンの意図を捉えた『COBAIN: モンタージュ・オブ・ヘック~ザ・ホーム・レコーディングス』と同じような、生々しいのぞき見的な体験をさせてくれるものなのである。

ヨークはよく思いついたばかりの曲のアイデアやリフを適当な歌詞を歌って録音しているので、こういった1人で録ったデモ音源の大半は大して重要なものではない(デモに録ったアイデアの大半が使われなかったのにはおそらく理由があるだろう)。しかし、レディオヘッドの公式リリース音源にすっと入ってもおかしくない完成したデモも数曲ある。中でも際立っているのが「ザ・デイリー・メール」や「ラスト・フラワーズ」(後者は次に紹介する)にも似た洗練されたピアノ・バラードのファンが「Tomorrow Night in Paris」と呼ぶMD127の最後の曲だ。

「ラスト・フラワーズ」(MD117 – 2:30、MD119 – 17:00、MD120 – 0:00)

アコースティック・バージョンの「パロ・アルト」やひっきりなしに手を加え続けていた「トゥルー・ラヴ・ウェイツ」のほぼ完璧なインスト・バージョン、いろいろと“歴史”がある「イグジット・ミュージック」など、18枚のMDに収録された際立った再編バージョンの中でも特にすばらしい変貌を遂げているのは複数回収録されている「ラスト・フラワーズ」である。『OKコンピューター』期の曲であるが『イン・レインボウズ』のデラックス・エディションのボーナス・ディスクで初めて完成版としてリリースされている。

『イン・レインボウズ』版ではヨークとピアノだけの曲となった。しかし、このMD版ではバンド演奏によるファンキーなベースラインや激しいファズ、ギター・ソロの途中で初期のタイトル「Last flowers till hospital」と歌うヨーク、そして、ジェームズ・ボンドのテーマ「007は二度死ぬ」に似すぎていると言えなくもないギターのメロディで、曲のより色鮮やかな可能性を示している。

前述の「トゥルー・ラヴ・ウェイツ」のオリジナルのライブ・バージョンがサウンドボード音源としてクリアに録音されており、それもこのMDの特筆すべき部分の1つではあるが、この曲が公式に初めてリリースされたのはEP『アイ・マイト・ビー・ロング』に収録されたアコースティック・バラードとしてであり、その後、形を変えて『ア・ムーン・シェイプト・プール』に余韻を残す最終曲として収録された。願わくは「ラスト・フラワーズ」にも同様の機会が与えられ、その潜在力がフルに発揮されてほしいものである。

Translated by Takayuki Matsumoto

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