レディオヘッドの長尺リーク未公開音源、聴いておくべき30分

レディオヘッドのコリン・グリーンウッド、フィル・セルウェイ、トム・ヨーク、エド・オブライエン、ジョニー・グリーンウッド(Roger Sargent/Shutterstock)

先日、先週17-8時間に及ぶ『OKコンピューター』の関連音源が何者かに盗まれ、現金を要求されたことを受け、バンド側は急遽作品のリリースをアナウンスした。「リフト」の最終バージョンから「レット・ダウン」「エアバッグ」の初期バージョンの演奏まで、今回公開された音源の中で要注目曲を紹介。

6月10日、レディオヘッドは、『OKコンピューター』誕生のプロセスを深く理解できる、トム・ヨーク個人のMDに録音された17時間の音源『Minidiscs [Hacked]』を(止む無く)公式にリリースした。そのタイトルが示すようにMD18枚分のmp3ファイルがインターネットにリークされ、その約1週間後、バンドは音源をバンドキャンプで公開した。

リークの発端はまだ明らかになっていないが、レディオヘッドはハッカーに音源ファイルに対し15万ドルの身代金を要求されていたことを公表している。再販盤『OKコンピューター OKNOTOK 1997 2017』のデラックス・エディションに付属のカセットテープはこのMD音源を短く編集したものである。

当然『Minidiscs [Hacked]』にも収録されているが、この80分のカセットテープにはサウンドを切り貼りしたものやデモ音源、未公開曲、リハーサル音源、実験的な試みを録音したものが収められており、『OKコンピューター』の制作過程を垣間見ることができた。しかし、今回の『Minidiscs [Hacked]』によってすべてが丸裸になった。

17時間におよぶ音源はレディオヘッドの熱狂的なファンにとっても長く感じられるだろう(ほぼ完成形である「アイ・プロミス」は14回も収録されている)。そこで、我々は『Minidiscs [Hacked]』をライトなファンも聞いておくべき30分としてまとめた。

注:今回の記事における曲の時間は、レディオヘッドのものではない音源(6枚目に収められていた15分におよぶジェイムズ・ボンドの曲など)や完全に不要な部分(公式リリースでは51分から18分に短縮された13枚目のMDに収められていた12分の野外録音音源など)を除外したレディオヘッドの公式リリース版の18のファイルを基準とせず、非公式のリーク版を基準としている。また、『OKNOTOK』付属のカセットテープに収録された音源も除外している。

「リフト」(MD125 - 10:00から)

「リフト」は20年以上、『ザ・ベンズ』リリース以降のライブで演奏されることはあってもスタジオ・アルバムやB面曲として収録されることがなかった。「クリープ」以来最高のフックを持った、レディオヘッドのファンが愛してやまない曲であり、『ザ・ベンズ』が持つブリットポップのよさと『OKコンピューター』の大衆受けを狙わず追求したアートが完璧に融合した曲であった。「リフト」は『OKコンピューター』の20周年記念盤のボーナス・トラックとしてついにリリースされたが、テンポが遅く抑え気味でおもしろみのないヨークのボーカル・テイクのそのバージョンはライブでのすばらしさを再現することができなかった。

すばらしさを再現するという意味では、3回分収められている当時の『リフト』のスタジオ音源は今回のMD音源においての至宝と言える。中でも最高なのは、チープな電子音のイントロとストリングスを模倣したシンセと重なり合う高揚感のあるギター、そしてヨークの情熱的なボーカルで録音されたMD125の10:00から始まるひときわ印象深いテイクである。この音源に収録された「リフト」にはバンドキャンプで寄付金として提示されている23ドルの価値、そして身代金の15万ドルの価値が優にあるだろう。

Translated by Takayuki Matsumoto

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