米移民問題、まるで映画のような腐敗した国境警備隊員の内幕

ボーエンと同僚隊員とのテキストメッセージのやり取りは被告弁護人から提出されたものだが、彼らはメッセージを裁判の証拠から除外しようと働きかけている。メッセージの内容を見ると、「guat(グアテマラ人に対する差別的呼び名)」や「fucking beaners(ヒスパニック系に対する差別的表現)」などという侮辱的な悪口は日常茶飯事で、さらに不法移民への暴力行為はただのジョークとしてまかり通るような職場環境が窺える。

テキストメッセージ全般に見られるように、不法移民は「tonks」と呼ばれている。国境警備隊による過剰な権力の行使を告発した2004年の連邦裁判では、「tonk」を「“ウェットバック(不法移民のメキシコ人)”の頭を懐中電灯で殴った時の音」と表現している。テキサス大学エルパソ校で人類学を教えるジョサイア・ヘイマン教授による国境警備の実態調査によると、1990年代初頭から国境警備隊は「tonk」という言葉を使用しているという。「階層制度の中のひとつの地位を表す」と教授は、国境警備隊員と不法移民との関係について解説する。「不法移民は殴ってもよい人々として扱われているのだ。」

(国境警備隊を擁護する者の中には、「TONK」は単に「Territory of Origin Not Known(出自不明者の意)」の略称か、「TONC」=「Temporarily Outside Native Country(母国外への仮出国者の意)」の代替スペルだとする者もいた。ヘイマン教授は、これら言葉の定義を「作為的」だとし、TONKという言葉は「国境警備隊自身によって、人が殴られる音として明確に定義された」ことを強調している。)

ボーエンが送信したテキストメッセージは、連邦捜査令状により押収された。裁判所は彼のメッセージを、「攻撃的な人種差別主義者と認識される可能性のある文書」と一括りにしている。被告弁護側は「移民に対する侮辱的な表現やボーエン氏の政治信条に基づく発言は、本法定で連邦政府が証明しようとしている違反行為のいかなる要素にも影響しない」として、テキストメッセージは裁判の証拠から除外されるべきだと主張している。

一方の検察側はボーエンが発信したテキストメッセージの一部を引用し、彼は「有罪の証明に関係する証拠を除外しようとしている」と以下のように主張している。

被告は、国境警備隊が「拘束から逃れようとする不法移民を逮捕する」にあたり隊員に課す制限が厳しすぎると考えている。今回の裁判においてこの考え方は、逃走する移民の逮捕を確実に実施するため被告が故意にF-150を使用したのではないか、ということに関連する。被告は、現場で彼が対応した移民たちが「たき火の燃料にもならないむかつく非人」だとみなしている。従って、車で相手をひくという深刻な危険性があったにもかかわらず、不法移民の逮捕にF-150を使用したのは適切だ、という被告の考えにつながったと思われる。

検察によるとボーエンは、他の車両の動きを封じる運転テクニックを人間に対して使ったことについてもテキストメッセージに書いている。「逃げるグアテマラ人に、F-150で人間版PIT行動を仕掛けてやった」とボーエンは事件のあった翌日に、同僚の隊員に送信している。「カメラで撮影していたし、誰もが俺が奴をひいたと思っただろう。結局そのtonkは全く無事だったけどな。フォードのバンパーでちょっと押してやっただけだ。」

政府によると「PIT」は「Precision Immobilization Technique」の略で、法執行機関の車両が、逃走するターゲット車両に体当たりしてスピンさせることで停車させ、動きを封じるテクニックだという。検察側は、「“人間版PIT行動”は正式な法執行の用語ではないが、今回告発されている被告の行為を的確に言い表している」と主張する。さらに一般には公開されていないが、現場で記録された証拠ビデオもあるという。

Translated by Smokva Tokyo

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