サンタナを救った一曲、低迷期に大ヒットが誕生した感動秘話

ホームズ:このレコーディングには一定の流れができていたね。ロブも一緒にボーカル・ブースで歌いながら1テイク目を録った。プロデューサーが「うん、すばらしかった。じゃあ、もう1度やってみよう」と言って、2テイク目をやった。また、全員で一緒に演奏しロブも歌う。それが終わるとプロデューサーが「すばらしい。もう1度だけやろう」と言った。そして、彼が「こっちに来て聞いてみよう」と言った。ほぼ完成版のように聞こえたよ。でも、その時は「いい曲だな。みんなも好きになるはずだ」ぐらいで「わお、世界一売れるような曲になりそうだ」とまでは思わなかった。「うん、まあまあいい感じになるだろう」って思っていたよ。

サーレティック:ロブのAメロの声にかけたラジオ・エフェクトは大きな議論になった。私はずっとニューヨークのストリート・パーティのイメージがあったんだ。人々はすごく帯域の狭いトランジスタ・ラジオで音楽を楽しんでいた。だから、その雰囲気を全面に出すにはそれがいい方法だと私は思ったんだ。でも、そのエフェクトをかけるとそれがレーベルとの大きな議論になったんだ。かけるのか?かけないのか?ピートは冷静さを失っていたよ。

ガンバーグ:マットが私たちに聞かせてくれた時は最初のAメロに電話の声みたいなエフェクトをかけていてボーカルが少し遠く聞こえたんだ。イライラしながらクライヴのオフィスに駆け込んで「クライヴ、彼らがボーカルのエフェクトを変えた。ああ、信じられない。バカげている。これじゃあダメだ!」って言ったのを覚えている。すると彼は私を見て「ピート、君は君の仕事をした。今度はマット・サーレティックに彼の仕事をさせてあげようじゃないか」と言ったんだ。

サーレティック:私はLAでセリーヌ・ディオンのレコーディング中で、彼女のバンドをそこで待たせているっていうのに電話でそのAMラジオ・エフェクトについて言い合う羽目になったんだ。でも、クライヴが「マットに彼の仕事をさせてあげよう」って言ったことは今後も忘れないよ。

5.さらなる困難

「スムース」を2ヶ月という短期間で作り、レコーディングするということだけでも容易なことではなかったがそこには次のハードルが待っていた。サンタナのようなベテラン・アーティストにチャンスをもらえるようにラジオ局(特にポップスを扱う局)を説得しなければならなかった。

デイヴィス:私はマットが聞かせてくれた時に初めて聞いたよ。圧倒的で私は仰天した。聞けばすぐにそれがすばらしいとわかるんだ。すぐに電話を取ってカルロスに電話したのを覚えている。これでカルロスは復活できるのか?カルロス・サンタナはトップ40に入れるのか?そういった疑問が現実味を帯びてきた。

サーレティック:ピートと私はビバリーヒルズ・ホテルでクライヴに会った。それはシングルを選ぶためのミーティングだった。私たちはそこで「スムース」、そして、私が1曲目のシングルになるだろうと思っていたエヴァーラストの曲を聞いた。彼らはまずはロックのシングルで行くつもりだったみたいだったから、私は「率直に言う。私がレコーディングした曲だけど『スムース』でスタートを切るのがいいと思う」と言った。クライヴが賛成してくれてみんなも賛成してくれた。自分の力のおかげだと言うつもりはないけどその曲がシングルになった。それはその日に決まったんだ。クライヴが決断し、そこから進んでいった。

デイヴィス:悩むことはなかった。「スムース」は1曲目のシングルになるべくしてなった。「マリア・マリア」もね。でもR&B系のラジオ局のことを考えると問題が出てくる。サンタナの曲を掛けてくれるのか?R&Bが入ってなくてもトップ40に入れるのか?ってね。

パルミーズ:私が覚えているのはクライヴが「スムース」を聞かせてくれたこととそれがシングルになることに対して誰からも異論がなかったことだ。

ガンバーグ: アリスタは1000万枚売り上げたマッチボックス・トゥエンティーのアルバムを出したロブを起用してシングルを出す許可を、15~20年ヒットを出していないアーティスト、カルロス・サンタナのために得なければならなかった。そして、アトランティックには私たちにシングルの許可を出したくない人たちがいたから争いになった。

デイヴィス:段階を踏んで許可を得なくてはいけなかったからこれには時間が掛かったよ。私はマイケル・チャップマンと話し合って、お互い得になるということ、これが1度限りのことでそれ以上の意図は何もないということを説明した。ロブをサンタナに入れるつもりはなかった。そして、私たちは許可を得るためのステップをどうにか乗り越えていった。

ランバーグ:私は「ジェイソン、後になってあなたは私に腹を立てるかもしれない。でも、これは次のマッチボックス・トゥエンティーのアルバムの踏み台にもなるでしょう。ロブは今でも人気ですがさらに人気になりますよ」と言った。私たちはこのことに関してはすごく感情的になったよ。

フロム:サンタナはレジェンドだ。クライヴもね。そして、ロブは本当にやりたがっていた。だからノーとは言えなかったよ。

Translated by Takayuki Matsumoto

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE