サンタナを救った一曲、低迷期に大ヒットが誕生した感動秘話

ガンバーグ:カルロスは売れるか売れないかで考えない。音楽性で考える人だ。彼は私に13分の曲とそれにつけるポルトガル語の歌詞を送ってきたりしていた。翌日、マネージャーから連絡があって「カルロスは相変わらずあの曲が好きになれないみたいだけど、彼が送ったポルトガル語の曲にあの曲の一部を使ったりするならいいと言っている」と言った。私が「ダメだ。彼のアイデアと私たちがヒットを狙った曲の一部を混ぜてポルトガル語の曲なんかにするつもりはない」と言うと、彼は「ピート、なんて言っていいかわからない」と言うので、私は「お願いだ。もう1度だけ彼のところに行って、『私たちが今までにここまであなたにこうしてほしいとお願いしたことはない。だから信じてほしい』とだけ伝えてほしい。やってみてもらえるかい?」と言ったんだ。

マネージャーはそれを実行し、電話をくれた。「ピート、失礼ながらカルロスはあなたと知り合ってまだ2年だと言っている。クライヴとは30年の仲だ。もしクライヴがクライヴ・デイヴィスの意見として個人的に言ってくれるなら彼はその曲をレコーディングすることに同意すると言っている」と言った。

私は正気を失ったかのように落胆しながらクライヴのオフィスに行って、カルロスはクライヴ個人の考えを聞かない限りレコーディングしないということを伝えた。クライヴは「問題ない」と言って手紙を書き取らせた。私がその手紙をカルロスに送るとマネージャーから連絡があり「カルロスはあなたがクライヴの指示でいろいろと動いてくれたことに感謝している。彼はあの曲をレコーディングすることに承諾したよ」と言った。

デイヴィス:私の記憶では私がカルロスに電話で聞かせたと思う。送ったんじゃないはずだ。電話で聞かせたよ。当時は電話でとてもクリアな音質で聞かせることができる機械があったんだ。彼は気に入ったって言っていた。私の記憶ではこうなんだけどね。

サンタナ:俺はまだ疑念が拭いきれず「クライヴ、もう曲は十分にあると思う」と言ったんだ。すると、彼は「信じてくれ。これは私が責任者なんだ。君にはこの曲が必要なんだ。この曲がアルバムで一番重要な曲になるから」と言った。それで俺はわかったと言ったんだ。俺はクライヴの考えに従うことには何の抵抗もないからね。

トーマス:今度は彼らが誰にその曲を歌わせるかを決めかねていたから、俺も誰にすべきかを決める手助けをしようとしていた。ジョージ・マイケルやボン・ジョヴィの名前を挙げたりもしたよ。

ガンバーグ:クライヴはいつも売れるかどうかを考えているから、もしマッチボックス・トゥエンティーのアルバムで大成功を収めたロブがこの曲で歌ったら、他の誰が歌うよりも成功に近づくだろうという考えは彼の頭の中にあった。私とマット、そして、今もマッチボックス・トゥエンティーとロブのマネージャーをやっているマイケル・リップマンで話し合って「いや、ロブ、君がやるべきだ」って言ったんだ。

サンタナ:歌詞の「it’s a hot one(魅力的だね)」というのを聞いた時、俺にはその歌詞が重力も時間もないものに感じられた。永久不滅の地に踏み込んだと思ったんだ。でも、ロブには失礼になってしまうけど俺は「君が歌ってることに現実味を感じない」と言ったんだ。

マット・サーレティック(プロデューサー):カルロスはロブについて疑念があり、様子を見ている感じだったね。私が彼についてカルロスと初めて話したのは「ロブは本当に信用できるシンガーだ。彼ならいいものにできる」みたいなことだった。カルロスは確信が欲しかったんだ。確信を持てなかったら他のどんなアーティストもそうなると思う。彼はスピリチュアルな人だからその会話から何かいい空気を感じたんじゃないかな。彼は「彼を信じる。さあやろう」と言ったんだ。

デイヴィス:カルロスは「俺たちには彼が必要だ。彼にやってもらわなければいけない。彼なら完璧だ」と言った。私は「口で言うほど簡単なことでもないんだ。彼は別のレコード会社と契約しているからね」と言った。

ランバーグ:ロブのためにラヴァ/アトランティック・レコードから2つの許可を取らなければならなかった。ロブを「スムース」のレコーディングに実際に参加させる許可と公式シングルとして「スムース」をリリースする許可。交渉は簡単には行かなかった。ジェイソン・フロム(ラヴァの社長)に「競合社の音源のボーカルをロブにやらせるわけにはいかない」と言われたから「カルロス・サンタナですよ」と言ったが「うちの最大のスターをなぜそちらに渡さなければならないんだ?」と言われた。私は「ロブがやりたがっている。何かデメリットはありますか?」と言ったんだ。

ジェイソン・フロム(ラヴァの社長):確かにそうだと思う。ロブはラヴァにいて、私は「うちには2人のトップ・アーティストがいるが、その両方をそちらに使われるわけにはいかない」(アリスタのランDMCが、ラヴァのキッド・ロックを含むゲスト・アーティストを呼んでの『クラウン・ロイヤル』のレコーディングの真っ最中であった)と言ったんだ。でも、うまく利用されてしまうのはいけないがそれはロブにとって大きなことだった。

トーマス:カルロスが「彼はできるのか?」と言い、最終的に俺はやることになった。その時は少し残念に思っていたんだ。作家になれると思っていたからね。バンド以外で誰かと何かをやるっていうのが初めてのことだったからマッチボックスのメンバーにもやってもいいか確認しなければならなかったし。みんな何の問題もなかったけどね。ポール(・ドゥセット)が「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」みたいになるのかってだけ聞いてきたけど「いやいや、カルロスの曲だよ」って言ったら「じゃあ大丈夫だ。やってこいよ」って言ってくれたんだ。

Translated by Takayuki Matsumoto

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